風早翔太に学ぶ!モテる秘訣 ‹ 59 ›

14巻 episode 59. 自由行動

―― 修学旅行の4日目 ――
沖縄旅行の最後となる今日は、自由行動が予定に組まれていた。
クラスの仲間達が人それぞれ自由にメンバーを組んでいく中で、風早と黒沼は予定通りに二人で沖縄を観光する事になった。
「 行っ  行こ うか 」
と、表情が硬くなって先導する風早。
「 あっ‼  う うん‼ 」
と、こわばって答える彼女も随分ずいぶんぎこちなくなっていた。
昨夜の出来事が尾を引いて、お互いにどうしても自然体ではいられなかった。
もし昨日のキスが成されていたとしたら、今日の二人はどう違ったのだろうかと興味深い所であるが、ギクシャクと緊張して出発する二人の妙な姿を見逃さない男がいた。
担任教師の荒井である。
( あの二人は、あんなに緊張して固くなって、一体何処どこへ何をしに行く気だ? )
この時に荒井が感じた教師の勘を言葉で表すならば、こんな風であろうか。
二人の不自然な雰囲気を怪しいと思った荒井は、彼が何か良からぬ事をするつもりなのではと心配になり、彼を捕まえて様子を探ってみた。
「 タガ   はずすなよ? 」
( 俺にはまだ彼女がいないんだぞ‼
  それなのにお前という奴は変に緊張しやがって・・・
  まさかとは思うが、黒沼に何かするつもりじゃないだろうな?  )
などと疑ったのかもしれないが、からかい甲斐のある可愛い教え子の不自然な反応が、この時荒井に確認されてしまった。
彼は荒井の懸念けねんを気に留める様子も無く、彼女を連れて観光名所をさっさと歩き出した。
二人の間には、以前の様に一人分の距離が再び開いてしまっている。
どちらが開けたのか、意識して開けたのかはわからない。
とにかく昨夜の出来事が始まりとなって、これから二人のやり取りがいくつもすれ違いを生む事になり、いずれ二人の関係に危うさがもたらされてしまうとは、この時は誰も思わなかった。
昨夜の事を強く反省している風早と、何も抵抗しなかった黒沼でさえも。
自由行動が始まって間もなくすると、ぎこちない二人に声をかける者が現れた。
それは1年生の頃に同じクラスにいたTさんであった。
彼女は二人を見るやいなや、妙な雰囲気をかもし出す二人に違和感を感じ取った。
何があったのかは知らないが、恋人同士にしては緊張して硬過ぎるのである。
そこで一肌脱いでやろうと思ったTさんは、二人の緊張を解くために色々と試してみた。
「 あっちに カップルで写真撮るのにちょーどいいスポットがあるんだよ 〰〰 」
しかし彼は( もうお節介せっかいはいいから )と言いたげに、Tさんにはっきりと断った。
すると、Tさんは残念そうに言った。
「 風早 ・・・・・・ あんた 貞子に女としての幸せをあげないっていうのかい ・・・? 」
女子からの適切な助言と思わせるTさんの発言に触発された彼は、黒沼のためであるならばと急に気が変わった。
「 黒沼! 撮ってもらおう‼ 」
彼はカメラをTさんに預けると、誘導されるまま足早にそのスポットの前までやって来た。
Tさんが強く勧めるスポットとは何かと思えば、観光客用の顔出しパネルである。
先程のやる気は何処へ行ったのやら、パネルを見るなり塩臭い表情に変わった彼であったが、パネルの穴から渋々しぶしぶ顔をのぞかせた。
どうやら彼は、このちびっ子用のパネルが気に入らないらしく、名所と呼べる場所を期待していたらしい。
彼がTさんに早く撮って終わらせてほしくて催促さいそくしていると、そこへまるで出番を待っていた様に、偶然をよそおいながら荒井が再び現れた。
荒井は御役御免おやくごめんとなったTさんからカメラを託されると、被写体のご両人をしばしながめながら何やら考えを巡らせた。
( まだ青いお前達の事だから心配してやってんだぞ!
  それはそうと
  彼女と一緒にいるのに何故そんなにシケたつまらない顔をしてるんだ⁉
  許さんぞ‼  もっと喜べ‼ そして楽しめ‼            )
恋人のいない者として、荒井からはそんな心の叫びが聞こえて来る様に感じた。
そして大きく息を吸い込むと、二人に写真を撮る合図を声高々に送った。 
「 北幌高校の王子様の 生まれて一番幸せな姿  撮りま―――――――す‼ 」
街行く人々の視線が一斉に風早達に注がれると、彼の引きつる顔と表情の硬い黒沼にレンズを向けて、二人が素敵な笑顔を出せるまで思う存分ぞんぶんにシャッターを切り続けるのだった。

一緒に恥ずかしい思いをしながら、荒井が認めるまで写真を撮られた。

    一緒に困難を乗り越えられる。

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