鶏卵〚chicken egg〛

たんぱく質に脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素をバランス良く含む栄養価の高い食品として知られる鶏卵は、FAOやWHOでアミノ酸スコアが100(満点)として扱われています。

アミノ酸スコアとは、食品に含まれる必須アミノ酸の種類と量を数値化した指標。

必須アミノ酸とは、人体のたんぱく質を構成している20種類のアミノ酸のうち、体内で合成できないために食事から摂取する必要がある9種類のアミノ酸を指します。

鶏卵は料理にお菓子、パンからソース類まで幅広く使える万能食材であり、栄養価に対して価格が安いためにコストパフォーマンスが高く、肉や魚よりも調理が手軽で保存も楽な特長があります。
羽毛が褐色や黒っぽい鶏は赤卵を産み、白い鶏は白卵を産むなど鶏種により卵の殻色が決まりますが、その卵に味や栄養価の違いは有りません。

【効果】

アミノ酸スコア 100

  • 鶏卵には9種類の必須アミノ酸が全て十分に含まれています。
    筋肉の維持・修復に役立ち、酵素やホルモンの合成にも貢献します。

豊富なコリンとレシチン

  • 卵黄には、コリンにレシチンという栄養素が豊富に含まれています。
    神経伝達物質「アセチルコリン」の素になるもので、記憶力や集中力、認識機能などに関与して脳の健康を支えています。
  • アセチルコリンには、血管を拡張させて血圧を下げる効果もあります。
  • レシチンは血管内のコレステロールや中性脂肪の分解や排せつを促すため、動脈硬化の予防が期待できます。

眼の健康に良い

  • 卵黄にはルテインやゼアキサンチンといった眼に良い抗酸化物質が含まれており、加齢黄斑おうはん変性症や白内障のリスクを低減してくれます。

全身の健康を幅広くサポートするマルチ食材

  • 鶏卵にはビタミン( A、E、B2、葉酸、パントテン酸、ビオチン )にミネラル( カリウム、リン、ヨウ素、セレン )なども豊富に含まれています。
    • ビタミンA
      眼、肌、粘膜の健康を維持し、免疫力を高めます。
    • ビタミンE
      抗酸化作用で細胞や血管の健康を維持します。
      血行を促進して、肩こりや冷えを改善します。
      肌のターンオーバーを促して、肌の調子を改善します。
    • ビタミンB2
      エネルギーの生産に関わり、糖質、脂質、タンパク質の代謝を助けています。
      皮膚や粘膜、髪、爪などの細胞の再生を促して健康を維持します。
    • 葉酸
      赤血球を作るビタミンで、貧血予防に役立ちます。
      動脈硬化の予防に役立つ可能性があり、心血管疾患のリスクを低減します。
    • パントテン酸
      エネルギーの生産に関わり、糖質、脂質、タンパク質の代謝を助けています。
      副腎皮質ホルモンの合成に関わり、ストレスを軽減する効果があります。
      血中のコレステロールを低下させ、動脈硬化の予防に役立ちます。
      肌や頭皮の健康を保つ働きがあり、肌荒れに抜け毛や薄毛の改善にも期待できます。
    • ビオチン
      エネルギーの生産に関わり、糖質、脂質、アミノ酸の代謝を助けています。
      皮膚や粘膜、髪、爪などの細胞の再生を促して健康を維持します。
    • カリウム
      腎臓でのナトリウムの再吸収を抑えて尿中に排泄させて高血圧やむくみを改善します。
      神経伝達や筋肉の収縮にも関与し、筋肉の働きを正常に保つ役割も担っています。
    • リン
      ATP(アデノシン三リン酸)の構成成分であり、エネルギーを生成する際に重要な役割を果たします。
      DNAに細胞膜、歯や骨を構成する成分であり、様々な生理機能に不可欠な栄養素。
    • ヨウ素
      甲状腺ホルモンの材料となり、成長や代謝など体の様々な機能を正常に保ちます。
    • セレン
      抗酸化作用を持つミネラルで、体内の細胞を酸化から守り、老化や病気の予防に役立ちます。
      甲状腺ホルモンの活性化にも関与し、代謝を促す効果も期待できます。

🛒 卵を購入する際の注意点

生卵を購入するときは、鮮度や衛生面、安全性などを意識することが大切になります。
以下のポイントを参考にしてみてください。

  • なるべく賞味期限の新しい卵を選び、産卵日の記載がある場合はそちらを重視しましょう。
    ※生卵の賞味期限は、産卵日の異なる卵を集めてパック詰めした日を基準に決められています。
  • 殻の状態を確認して、ひび割れのある卵や、目に見えて汚れている場合も避けましょう。
  • 認証マーク(例:JAS、有機、無投薬)付きの信頼できるブランドや生産者の卵には安心感を得られます。
  • 飼料や飼育環境にこだわっているかどうかをパッケージでチェックするのもおすすめ。
  • 購入後の卵は、帰宅後すぐ冷蔵庫に入れましょう。
🥚 さらにこだわるなら…
  • 平飼いや、放し飼いの鶏が産んだ卵
    鶏の受けるストレスが少なく、多種多様な餌を食べられる環境で健康に育った鶏が産んだ卵は特に栄養価が高くて風味が良い。
  • 用途別に選ぶ
    生食 → 新鮮な生食用卵    加熱料理 → 少し安価な普通の卵

卵の衛生管理が非常に厳しい日本では、卵かけご飯のように生で食べる文化が定着していますが、海外ではサルモネラ菌対策などの衛生管理が不十分のため生で食べません。

【好ましい食べ方】

食物繊維とビタミンC以外の栄養素はほぼ網羅している卵。
そのため、アレルギーのある人や乳幼児を除き、2~3個/日を食べるべきだと言われています。
しかし、栄養が豊富であっても食べ方次第でその吸収効率や健康効果は大きく変わります。
例えば、生卵の場合は酵素や熱に弱いビタミン類を壊さなくて済みますが、生卵の白身に存在しているアビジンというたんぱく質は、ビオチンと強く結合して体内への吸収を阻害する事が知られています。
逆に、加熱した場合は熱に弱い栄養素が台無しになってしまうでしょう。
そこで、卵の栄養を最大限に活かすという点では、その中間の状態である半熟(温泉卵・ポーチドエッグ)をお勧めする事ができます。
半熟状態は加熱による栄養の損失が少なくて済み、たんぱく質とビオチンも消化吸収され易い状態であるため、最も効率的に卵の健康効果を得る事ができます。
更に、野菜や果物などのように食物繊維やビタミンCを含む食材と組み合わせて、良質な油と一緒に摂るように心がけると、栄養バランス満点で健康効果の高い素晴らしい食事が出来上がります。


雄のひなの行方

今回の本項では、少し深くて重いテーマを取り上げました。
養鶏業を営むにあたり、鶏のゆう鑑別には避けては通れない現実があります。
その背景には「産業」「倫理」「技術」など様々な要素が絡んでいます。
雌雄鑑別とは、生まれて間もない雛を雌と雄に選別する作業であり、日本では雌雄鑑別師という専門職人によって、現時点では選別と殺処分が現実の一部として行われています。

このテーマは以下のような視点から多く議論されています。

視点課題・関心点
倫理・動物福祉「命の選別」の是非、ヒトの都合による扱い
経済性雄ヒナを育てるコストと市場価値
科学技術性別を早期に判別・制御する方法の開発
社会認識消費者の関心・透明性の確保

現在の雌雄鑑別には、主に以下の方法がとられてます。

  • 肛門鑑別
    雌雄鑑別師が肛門(総排泄腔)の形状を目視して性器の有無を確認する方法。
    日本を含めるアジア圏に主流の方法であり、数秒で正確に鑑別する難易度の高い技術が必要とされています。
  • 羽毛・体色鑑別
    特定の品種の雌雄を交配することで、雛の羽毛の伸び具合と羽色に性差が出る遺伝的な特徴を利用して判断する方法で、欧米で広く用いられています。
  • DNA鑑定や分子レベルでの鑑別
    これらの鑑別方法は研究中であり技術が確立していませんが、将来的には卵の段階で性別が判別可能になるとされています。

このように、現状では雌雄の判別は雛が産まれた後に行われています。
そのため、雄の雛は将来卵を産まない事や、食肉用ではなく採卵用の品種から産まれた雛であるために成長効率が悪いとの経済的な理由から、通常では雄の雛が飼育される事は無く、孵化ふか後すぐに殺処分されてしまいます。

🧭 国際的な動き

🌍【殺処分ゼロを目指す動き】

  • ドイツ、フランス、オーストリアなどは雄雛の殺処分の禁止に踏み切りました。
  • 日本や他国でも同様の方向を模索しています。

🧪【代替技術】

  • 遺伝子編集技術により、卵の段階で性別を判別する方法が成功しています。
  • 雄雛の有効活用。
  • 卵も産めて食肉にも向く品種の復権も検討中。

このように、課題の解決に向けた明るい取組みもいくつかあります。
「雌雄鑑別」は、鶏の命に直接関わる重要かつ繊細な仕事であり、現代の食と倫理の交差点にある課題でもあります。
技術的な進歩によって、いずれ「雄雛を殺処分しない」未来が来るといいですよね。

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