グラスフェッドビーフ〚grass-fed beef〛

ステーキ、ローストビーフ、すき焼き、しゃぶしゃぶなど、世には牛肉を主役とする料理が数多くあります。
外国人にも人気の高い日本のブランド牛は、風味や食感が非常に好まれており、中にはオレイン酸(健康的な脂肪酸)を豊富に含むブランド牛も存在しますが、健康面ではグラスフェッドビーフに勝る牛肉は存在しないでしょう。

グラスフェッドビーフ(牧草のみで飼育された牛の肉)は、通常の牛肉(グレインフェッドビーフ=穀物肥育された牛の肉)と比べて、健康面で明確なメリットがあります。

🍽️ 味や食感などの違い

項目グラスフェッドグレインフェッド
脂が少なくて肉本来の味が濃いサシが多くて甘みとコクが強い
食感赤身中心でやや硬め脂が多くて柔らかい
香り草っぽい香りが感じられることも香ばしくて脂の香りが強い

一般的な牛肉はトウモロコシや大豆かす、小麦ふすまなどの穀物を牧草飼料に混ぜて牛を短期間に太らせた「グレインフェッドビーフ」ですが、牛は草食動物であり、本来は穀物を食べません。

🌽グレインフェッド(穀物肥育)の目的

  • 早く太らせる(出荷までの期間短縮=コスト削減)
  • 肉にサシ(霜降り)を入れて「やわらかく甘い味」に仕上げる
  • 牛肉の供給量を安定化させる(大量生産が可能)

⚠️ 穀物を与えることによる影響

  • 抗生物質の使用が増す
    (草食動物である牛の消化器に負担がかかるため)
  • サシが増えて肉質が柔らかくなる
    (オメガ6脂肪酸が多く、オメガ3脂肪酸が減り、炎症リスクが上昇)

🌱 牧草飼育(グラスフェッド)は牛や人の健康に良い
穀物肥育は家畜としての産業的手法であり、牧草飼育の方が牛の生理と調和しているため、健康な牛が育ちます。

🐮 栄養素の比較

栄養素グラスフェッドグレインフェッド
オメガ3脂肪酸グレインフェッドの2~5倍少ない
CLA(共役リノール酸)多い普通
タンパク質普通またはやや多い普通
亜鉛・銅多い多い

🌟 期待できる健康効果

✅ 体脂肪を増やしにくい(脂の質が良く、総脂肪量が少ない)

生活習慣病リスクの低下(オメガ3:オメガ6のバランスが良い)

✅ 豊富な亜鉛
  新しい細胞を作るためには必須のミネラルで、皮膚や髪まで健康にしてくれます。
  体内に存在する老化物質である活性酸素の除去に関与しています。
  免疫機能の向上に貢献してくれます。
  味覚を感じる細胞に働きかけて、味覚の維持に役立ってくれます

✅ 豊富な銅
  赤血球に含まれているヘモグロビンの合成に必須のミネラルで、貧血予防に役立ちます。
  免疫細胞の代謝能力に関わるため、免疫力を高める効果も期待できます。
  活性酸素を消去する酵素を構成するミネラルであり、動脈硬化の予防にも効果があります。

🍽️ 食べるときのポイント

グラスフェッドビーフはステーキやローストビーフなどの料理に向いています。
低温調理やミディアムレアで柔らかく仕上げれば、栄養も壊さず美味しく頂けます。
ビタミンCを多く含む野菜(パプリカ、芽キャベツ、ブロッコリーなど)と一緒に摂ると、鉄分の吸収率が上がります。

グラスフェッドビーフの真価
料理好きの方へ贈る “ 赤身肉 ” 再発見のすすめ

健康志向が高まるにつれて、世間ではグラスフェッドビーフという言葉に触れる機会が増えてきました。
自然に近い環境と飼料で育てられた牛の肉は確かに私達の身体に優しくて、通常の牛肉よりも健康に良い栄養素が多く含まれています。
しかしその一方で、価格が高くて日本国内では入手がやや難しい他に、「脂が少なく、固く感じる」「風味にクセがある」といった声も少なくありません。
とりわけ、食にこだわりのある方々や、日頃から丁寧に料理をされる方々の中には、グラスフェッドビーフから少し距離をとっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
けれど実のところ、この赤身肉は、素材を見極め、手間を惜しまず、風味の奥深さをたのしむことが出来る料理人の手にこそふさわしい食材であり、部位選びや調理方法次第でマイナスのイメージをくつがえすことが出来ます。

  • 部位選びを工夫する

この食材の魅力を引き出す第一歩は、赤身でも柔らかさと旨味のバランスに優れた「部位の選び方」にあります。
脂が少ないからこそ、しっとりとした柔らかさを感じやすい「ランプ」や「イチボ」、繊維の細かい「ミスジ」などは肉本来の風味を感じられる部位であり、グラスフェッドならではの赤身の滋味じみを味わわせてくれます。

  • 調理法と他の食材で美味しさを引き出す

さらに、グラスフェッドビーフの特性に合わせて調理方法を工夫する事で美味しさを最大限に引き出し、この肉の印象を大きく変える事が出来ます。
とくに効果的なのは、加熱を抑えて肉を柔らかく保つ調理技術でしょう。
マリネによる下処理、低温調理や余熱を活かした調理方法などによって、肉汁を内部に閉じ込めた状態で柔らかくしっとりと仕上げます。
天然塩やハーブ、オリーブオイルなどでマリネしたのちに軽く焼き、余熱で火を通す──
そんな静かな手間が、肉の個性を存分に引き立ててくれます。
また、味付けについては、脂に頼らない調味料との組み合わせが鍵になります。
赤ワインやバルサミコ酢、味噌や発酵バターなどの発酵食品を使ったソースと組み合わせることで奥深い味わいを得られます。
パルミジャーノ・レッジャーノのような熟成チーズや、粒マスタード、柚子胡椒などの香りと刺激のある調味料とも相性が良く、グラスフェッド特有の “ 野生的な風味 ” をむしろ「素材の個性」として楽しめるようになります。

  • 料理人の腕が問われる “ 素材 ”への理解

グラスフェッドビーフは、手早く調理してすぐに満足を得るタイプの食材ではありません。
素材と向き合う時間そのものが贅沢ぜいたくな食材であり、料理に奥行きを与えてくれます。
料理好きの方にとっては、扱いの難しさが逆に「挑戦しがいのある魅力的な食材」となり、完成した料理にはグルメな味覚をも十分に納得させられる、ひときわの満足感が伴います。
「ただの健康食」ではなく、料理の腕前と感性によって真価が発揮される、極めて表現力の高い食材として、その本質に触れたとき、グラスフェッドビーフはこれまで以上に魅力的に映ることでしょう。

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