1巻 episode 0. プロローグ
この物語の主人公である彼女の名は、黒沼 爽子、北幌高校に通う1年生。
学校では、彼女は『 貞子 』という名で知られている。
ある理由により、周囲から色々と敬遠されがちな生活を送ることになってしまった彼女だが、実はクラスの雑用や委員などの仕事を進んで引き受ける、学業も優秀な、しっかりした一面を持っている無垢で真面目な女の子だ。
彼女には学校の近くに住まいが有り、早朝によくジョギングに出かける。
そのついでにゴミ拾いを行い、それからいつも余裕を持って登校する事が多い。
そんな真面目で勉強好きな彼女が、不憫にもクラスで浮いてしまっていたとしても、勉強以外に学校に来る楽しみが有った。
登校時間、朝の教室で 、いつも通りに登校した彼女。
賑やかな声とともに、クラスメイト達も次々と教室に入って来ていた。
時はもう1学期が終わる頃で夏休み直前、彼女は入学時からクラスの皆に打ち解けようと努力してきたが、未だ彼女へ自然に挨拶を返せる人が、このクラスにはいなかった。
ある一人の男子生徒を除いて・・・。
その男子生徒こそが、これから私達にモテる秘訣を教えてくれる人物である。
その名は、風早 翔太、中学生の頃から男女問わずの人気者でモテモテ男、彼を目当てにして同じ中学校から北幌高校に進学してきた人物が大勢いるほどだ。
そんな彼が、爽やかな笑顔と挨拶で、明るく教室に現れると、クラスの仲間達から元気な挨拶で迎えられ、集まって来た皆の輪の中心へと自然に溶け込んでいくのだった。
彼は黒沼と偶然にも目が合うと、彼女にも自然に挨拶している。
彼女は人望の厚い彼を、憧れの視線でそっと追いながら、初めて会った時に抱いた、言葉では容易に表せない、幸せな感情を思い出していた。
風早がクラスの中心になってイベントの計画を進めていく姿を遠くで見つめていたり、ホームルームの時間では、夏休みの初日だけ担任教師を手伝う生徒を選ぶ事になった際、いつも何か手伝っている彼女と部活などで忙しいクラスの仲間達を彼が庇ったりしてくれるものだから、彼女は改めて彼を尊敬し、憧れの気持ちを強くするのだった。
第一印象はとても重要である。
仲間達を庇う。
終業式前日の夜に行われるクラスのイベント、肝試し大会に参加した風早と黒沼。
とある事で、二人は暗い森の茂みにに隠れて、長時間を二人きりで過ごす機会を得た。
すると翌朝の教室では、怪しい行動をした二人に何があったのか、それが話題で持ちきりで、皆の関心事になっていた。
人気者の彼を独り占めした黒沼に向けられた女子達の嫉妬と、男子達の茶化したい気持ちから来る酷い扱いに対し、彼は徹底して黒沼を庇うのだが、彼女はクラスに広まる誤解が進行して彼の名誉が傷付いてしまう恐れから、はやし立てる皆の前でも冷静を保ち、誤解を解くためにありのままを胸の内まで話すのだった。
次の日、夏休みに入った風早は、担任教師の仕事を手伝うために登校する黒沼に会いに行き、クラスメイト達の悪ふざけで傷付いた彼女を心配し、二人のこじれそうな関係の改善に努めるのである。
傷付けてしまったら、出来るだけ早く関係改善に努める。
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