25巻 episode 102. 絆
『 教育大 決めたんでしょ
・・・ ちがうの?
・・・・・・・・・ でも ずっと思ってた
黒沼は本当は行きたいんじゃないかって
本当に ちがう?
大丈夫だよ 黒沼は 新しいところで 大丈夫 』
黒沼が第一希望にしている風早と同じ大学の学部は、彼女からすれば楽勝な合格安全圏。
そのため塾に通って胡桃沢と受験勉強に熱を入れる彼女の姿勢を見れば、彼がそう思っても不思議は無い。
学校祭の打ち上げをした、あの時 ――――
二人は殆ど話をせずに、手を繋いで家へ帰った。
あれから彼女はまだ、彼の問いかけに何も答えられぬままである。
あの時は、彼からの予測出来なかった問いかけに戸惑ってしまい、無意識な自分の中に有る確かな答えを即座に上手く探せなかった。
そして彼と二人きりになった今、彼女には問いかけに応じる機会が訪れている。
私は 無意識に逃げてたんだ
風早くんと離れるなんて 考えるのもこわくて
教育大に興味があったのに
見ないふりをしていたんだと思う
彼女は、両手を合わせて深く謝った。
「 打ちあげの時は ごめんなさい
そのあとも ・・・ 普通っぽく見せかけてごめんなさい
・・・・・・ 全然 ・・・・・・・・・ 普通じゃなかったの ・・・・・・
風早くん 私と離れるつもりでいたんだって
・・・・・・ 平気なんだなって
そうじゃないのに そうじゃないのに
・・・・・・ 言わせちゃったのに ・・・・・・・・・・・・ 」
「 ちがうよ 俺が焦った
いーから あやまんなくてい ―― 」
思わず彼女の手を取った彼は、問いかけの答えが話し出される過程の中に、女の子の気持ちを垣間見た。
これを理解出来たなら、彼女から話してくれるまで待った甲斐が有ったというものである。
男性は結果や結論を早く求める傾向が有り、女性は段階と過程を大切にする人が多い。
女という生き物は、本当に面倒くさい・・・
などと、一度でも思った事が有る人は、少し考えを見直した方が良いのかも知れない。
・・・ よく 考える
私にとって 教育大が 本当に必要なのか そうじゃないのか
その上で 風早くんと同じ大学を目指すなら それでいいんだ
もし 考えて 教育大を選んだら ―――――
その時は 私から この手を離すことになる
女の子の気持ちや考え方を理解出来る。
[ 広告 ]