26巻 episode 104. もうちゃんと甘えてる
いくら話を続けても、互いの主張は平行線。
結局その場で話がまとまらず、続きは夏休みの宿題へと持ち越された。
夏休みに入り、胡桃沢と塾に通う黒沼の一方で、猛勉強の傍ら店の手伝いをこなす風早。
二人はしばし、お互いの主張を思い出して時を過ごした。
これは、二人にとって初めてのケンカと言えるもの。
二人は口論の末に物別れになった理由を考えた。
黒沼からすれば、風早については、まだ分からない事だらけだと言う。
彼は黒沼にはあまり自分のことを話しはしない。
彼女と一緒にいる時は、何か考えている様な顔をしている事がよく有る。
要するに、彼女とのつき合い方ひとつひとつの言動に気を付けて慎重なのである。
彼は彼女と一緒にいる時よりも、他の人といる時の方が自然体でいられたのだった。
彼の言動に嘘偽りは無いものの、彼女は信用出来ても不安を消せなかった。
しかし、今回の進路をめぐる口論で、途中から二人は本音を言い合った。
ケンカする程仲が良いと耳にする事が有るが、互いに本音を言い合える関係は大切である。
彼女はケンカを通して彼と心が近づいた事に気付いた。
そして、ある日の晩のこと ―――
塾帰りの黒沼は、彼と会っていた。
どうしても早く話の続きをして、仲直りをしたかったからである。
「 ・・・ 風早くん 自分のこと話してくれないって思ってたけど
私もそうだった! ・・・ 私 喋ってなかった!
だから 私の気持ち言ってなかったから
風早くんが私の気持ちわかんないの当たり前だった!
・・・ か ・・・・・・ 考えさせてほしいの!
本当に行きたかったら 教育大に行くから!
・・・・・・ でも ・・・・・・・・・・・・
離れたくない気持ちも 否定しないでほしい ・・・・・・
別れるなんて ・・・ 思ってないよ ・・・ ・・・ 思いたくないんだよ! 」
「 ・・・・・・・・・・・・・・・ うん 」
「 ・・・・・・・・・・・・・・・ 言えた ・・・・・・・・・・・・
・・・ 私 風早くんに もう ちゃんと甘えてるんだね ・・・・・・・・・ 」
「 ・・・ うん うん ・・・・・・ ごめん ごめんな 」
彼女の本音をしっかりと受け止めた風早。
今度は彼が、まだ話していない本音を彼女に伝える。
本音を言い合える仲である。
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