26巻 episode 105. 憧れ
いつしか、風早は言っていた。
『 これから大学とか行ってさ
俺より黒沼のそばにいて
俺より全然いーやつで
俺の知らないそーいうやつが
黒沼のこと すきになるかもしんない 』
彼は、もし黒沼が教育大に進学したら、自分よりもっと素敵な人物と知り合う可能性が有ると想像していた事がわかる。
つまり、この先で誰かに恋人を獲られてしまう可能性から不安を覚えていたのは彼も同じであった。
彼女はただの勉強が出来る可愛い娘では無い。
それだけでも凄い事であるが、彼女は強くても、驕り高ぶらない。
彼女は、本当に強くて優しい。
例えるなら、過酷な環境下でも、力強く、粘り強く、美しく咲き続けられる花の様である。
風早は、自分には無いものを沢山持っている黒沼を切望した。
彼女の強さは、何も彼女自身のためだけに有るのでは無い。
彼女は、世のため人のために働いた時、自身の価値が一層に高まる事を知っている。
彼女が自身の勉学を優先して良く考えた末に教育大を選択し、そこで誰かと仲良くなったとしても、風早の気持ちは、これからも何も変わらない。
彼女の話を全て聞けた頃、彼にも言うべき話が整った。
今から話を始める彼は、信用してくれても不安を残す彼女の気持ちを察していたのだろう。
夏の夜道、涼しくなった風に触れて、彼は本音を話し出した。
「 行くなよ ・・・・・・ って
・・・・・・・・・・・・ やっぱり ・・・・・・ 言えない ・・・・・・
考えて
選んで
だけど 本当は行きたいけど
俺がいるから残るっていうのは 俺 そんなのやだ!
そんな黒沼らしくないことさせんのは 俺 絶対やだ‼
ずっと そう思って でも
離れたって かまわないとか全然 思ってなくて
理想と現実がかみあわなくて
でも でも本当は ―――――
俺は 黒沼みたいになりたかった!
黒沼が ちゃんと甘えられるように
困った時に頼れるように
黒沼みたいに強くて優しくなりたかったんだ ――――――
黒沼は 俺の憧れだから‼
ずっと 黒沼が何を選んだって ずっと‼
それだけは絶対変わんないんだ!
何があったって ずっと‼ 俺は黒沼がすきなんだ‼
「 ひとりでも大丈夫 」って言ったけど ・・・ ちがった!
・・・ ふたりだから ふたりだから! 大丈夫‼ 」
「 ・・・・・・ うん うん! 」
黒沼は、彼の首に両腕を回し、大胆にも思い切り甘えて抱き着いた。
かかとを浮かせて彼に寄りかかる姿からは、こんな声が聞こえてきそうだった。
風早くん! だーい好き!!! ❤︎💕❤︎💕❤︎💕❤︎
絶対に私を離さないでね! Chu❤
初めてのケンカを乗り越えて、絆を更に強めた二人に円満が戻る。
わけて いけたらいいね
ふたりで いろんなことを
何でも分かち合える。
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