風早翔太に学ぶ!モテる秘訣 ‹ 106 ›

26巻 episode 106. 忘れていいの

―――― いつやるの?   今でしょ‼ ――――
塾が盆休みに入ったところで、流石さすがに勉強漬けの毎日に疲弊ひへいし始めた胡桃沢。
しかし彼女には、休んでいる余裕など無い。
その彼女とは反対に、勉強意欲のおとろえを全く知らない黒沼は、とても頼もしい存在である。
黒沼から1泊2日の勉強合宿に誘われていた胡桃沢は今、沢山の問題集を持ち込んで、黒沼の家へお邪魔している。
彼女が黒沼の誘いに応じ、一緒に勉強しているのは大いに結構であるが、これでは一方的に黒沼を喰いものにしているだけと、胡桃沢は後ろめたさを感じていた。
胡桃沢は、黒沼と一緒に勉強する事で成績を上げる狙いが有ったのであるが、彼女には他にも大切な目的が有った。
かつては黒沼を風早から引き離すためなら手段を選ばすおとしめた彼女に、この合宿にはどんな目的が有るのだろうか。
黒沼は、胡桃沢の胸の内を、まだ何も知らない。
夕食の時間にて ――――
受験勉強、お疲れ様!
可愛い娘がいつもより一人多い黒沼家の食卓では、もてなしの明るい話が絶えなかった。
ストレスを抱えて毎日頑張る人にとって、美味しい食事は心の栄養も与えてくれる。
二人の受験生は、温かい手料理を前に、手を合わせて頂いた。
「 味 大丈夫かしらー‼ 」
「 おいしいです ・・・ 」
「( 勉強の話意外に )恋愛の話とかは⁉  しないの⁉
  彼氏とか すきな子とか! いないの ―― ⁉    」
「 ・・・ いません 
  今は受験のことで頭がいっぱいなので 勉強のことだけ考えてます 」
「 えらいね 〰〰
  くるみちゃん もてそうなのにぃ! 」
「 もてることは もてるんですけど 」
「 でしょでしょ ――
  今までどのくらい告白されてきたの ⁉ 」
「 数えきれません 」
「 くるみちゃんは どんな子が好きなの? 」
「 わたしは ―――
  自分と真逆なひとが すきです
  ・・・ まっすぐな ひとがすき  」
胡桃沢が我が娘の恋敵だった事を知らない母は、楽し気に話を進めていたが、娘の隣で食事をりながら淡々と話す胡桃沢が頭に思い浮かべていた人物は、勿論もちろん風早であった。
学園のアイドル並みにモテて来た、目の肥えている彼女が風早に下した評価は容姿についてでは無く、性格を称賛しょうさんするものであった。
彼が家庭でつちかってきたマインドは、学園のアイドルにも十分に通用していたのである。

胡桃沢に性格を称賛された。

    尊敬される人である。

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