27巻 episode 108. 言えたよ
風早の母が・・・・・入院 ―――――
この一大事を知った黒沼は、今夜の夕食の余り物を重箱に詰めると、夕飯作りに苦戦する風早のもとへと駆けつけた。
「 わ‼ ありがと黒沼‼ 」
「 これ あまり物だけれど ・・・ 」
「 うわ いいのー? うれしー‼ 」
「 あの ・・・ お母さん大丈夫 ・・・? 具合 ・・・ 」
「 あー うん こういうの よくあるからさ
ちょっと 暑さで疲れも出たんじゃないかな 大丈夫だよ 」
「 本当? 」
「 うん! 明日ちょっと病院行くけど 」
「 そーなの⁉ 」
「 一緒行く? 」
「 いーの⁉ 」
「 大丈夫だよ けっこー元気だから 」
今夜は彼女のお陰で美味しい夕食に有り付けた、風早家の男達。
彼らは持病を抱えている母が体調を崩して入院する事を、これまでに数回経験して来た。
彼らは黒沼に感謝すると、美味しい御飯を毎日作ってくれた母にも改めて感謝した。
その母は、入院する前に沢山のおかずを作り置き、冷凍保存してくれていた。
しかし男が3人いれば、それも数日で食べきってしまう。
母不在のそんな時、父が頼ったのは外食や出前、宅配などでは無く、長男の息子であった。
食料品の買い物から調理まで任せられるのは、家族の中で彼しかいない。
彼は健康管理に厳しい父と、育ち盛りの弟の事を思い、冷凍食品や加工食品、インスタント食品やレトルト食品などには頼らず、食品添加物を含めない料理に挑戦した様子だった。
苦戦しながらフライパンを何度も返し、頑張って一品作ったのであるが、当然の事ながら、母の様に上手くは作れなかった。
彼の料理と黒沼家の料理をテーブルに並べた時には、見た目も味も違いが歴然としていたのであるが、彼が頑張って料理した事自体は高く評価したい。
仕事で手いっぱいの頑固親父に生意気な弟、この2人に料理は作れない。
それに、人に食べてもらえるレベルの料理を作れる様になるにはそれなりの練習が要るし、料理にも愛情が大切だと言われている。
栄養バランスのとれた毎日の食事は、健康に生きるために大切であり、大学でスポーツ科学を専攻したい彼にとって重要なテーマの一つである。
いずれ彼が大学で学べば、アスリートの体が求める食事を作れる様になるかも知れない。
また、一人暮らしの人や共働きの夫婦などであれば、調理は是非とも習得したいスキル。
特定の料理だけでもマスターしていれば、周囲から高い評価を受けられるかも知れないし、外食する事が多くなっては食費が嵩んでしまう。
料理を作る。
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