28巻 episode 113. 吹雪
今年も二人で初詣に行く予定の風早と黒沼。
時は黒沼の誕生日である12月31日、大晦日の夜のこと。
18年前の今日、十数分も経てば日付が変わる頃に、彼女は産声を上げた。
それで風早は、彼女が生まれた時間に誕生日を祝い、そのまま初詣をする事を望んでいた。
今夜は吹雪になると、予報されていても・・・。
大切な事は本人に直接口で伝えるのが彼の信条の様なものであるため、お祝いの言葉を当然まだかけられていない。
彼が天気を気にして窓から外の様子を覗いてみると、弱かったはずの風が知らぬ間に強風になっており、彼が出発する少し前には、外出が困難な程に、ゴオオオと唸る強い吹雪へと変貌していた。
⦅ これは‼ 初もうでどころじゃ・・・⁈
会いたいけど! いや今日は会いたいけど‼ でもこれは‼
むかえに・・・ いや せめてプレゼントだけ渡しに行くとか
まださすがに家でてないよな! とりあえず連絡っっ ⦆
そう思った彼は携帯電話を手に取ったのであるが、彼女の携帯は電源が入っていないのか、それとも電波が届かないのか、繋がらない。
もしやと思い、彼は吹雪の中を待ち合わせ場所へ急いで向かった。
案の定、彼女はそこにいた。
彼は彼女に初詣を諦めてもらうと、避難するために自宅へと急いで戻った。
非難するには黒沼家よりも風早家の方が近く、彼女の体は随分と冷えていたのである。
自宅へ戻ると、母が彼女を温かく迎えてくれた。
二人は吹雪が朝になるまで収まらない事を母から知らされると、彼女は急遽風早家に一晩泊まる事になった。
部屋へ通された彼女は、そこで初めて "こたつ" をその目で見た。
こたつ初体験の黒沼が、凍えた足を布団の中に入れると、風早は設定温度を最大にした。
こたつの温もりに感動し、彼女の言葉が弾み出す。
何気ない瞬間に、二人の足先がそっと触れる。
何気ない些細な事でも、一緒に温まっていると楽しくなってしまう。
今までに体感した事の無いくつろぎ感覚に、二人で寝そべりたくなっても不思議では無い。
⦅ なにこれ ・・・・・・・・・ めちゃ楽しい 〰〰〰〰〰 ! ⦆
二人きりで入るこたつに、互いの気持ちが一言一句、完全に重なった。
災い転じて福となした息子が、次に取った行動は・・・?
狙い澄ましている様に、甘い雰囲気作りに力を入れ始めた風早。
しかしその時、心配していた母が熱いお茶と甘い蜜柑をお盆に乗せて、やって来た。
「 お ・・・・・・ お茶だけど ・・・・・・ あの ・・・ あんたね ・・・? 」
( 大事なお嬢さんあずかってんだから おかしなことするんじゃないよ? )
数分前に母から言われたばかりの事を、「 はっ 」と思い出す息子の風早であった。
言葉遣いが似通っている。
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