今回の episode は、教え子達と初詣をする事になった荒井から、良い点を書き記してみます。
28巻 episode 115. ねがいごと
1月1日 元旦 ―――
夜が明けると、外は昨夜の吹雪がまるで無かった事の様に治まっていた。
新年の明けた、天気も落ち着いた今日は、朝から多くの人々が初詣に出かける。
一見では宗教観の希薄そうな荒井も、その一人であった。
去年も野球部の指導で忙しくしていた彼は、それでも年末まで彼女作りを諦めなかった。
男前のはずなのに、何故か素敵な女性に恵まれない。
荒削りな性格の彼は、自分の何がいけないのか分からなかった。
動機が不純かも知れなくても出会いを求めた彼は、神仏にすがる思いで参拝を決めた。
地元の神社には、彼の教え子達が集まっており、その中には矢野の姿も見受けられた。
彼女は荒井と対面すると、平常心を装って話しかけた。
「 ひ ・・・ 久しぶりっ 」
「 いや そんな久しぶりでもねーだろ
てか おまえ大丈夫なの?
おまえ今 神頼みより体調管理とおおづめなんじゃねーの 」
「 わかってる
じゅうじゅうわかってる それは‼
・・・・・・ 最後の ヤル気補充 ・・・・・・・・・ 」
「 ならまぁ ガッツリ補充しとけ‼ 」
「 ・・・ う うん ・・・・・・・・・ 」
こうして彼は、教え子達と初詣に参拝する事になった。
案外彼は、教え子達への面倒見が良く、子煩悩な面が有る。
教育現場に携わる者として、色々な子供の扱いに慣れている。
参拝の後、ヤル気を補充させる目的では無いのであるが、彼は全員に温かい飲み物を買ってあげた。
ケチな担任教師が見せた意外な一面に、矢野は話しかけずにいられなかった。
「 おみくじ ・・・ どーだった ・・・・・・? 」
「 おみくじィ⁉
この惨状見ろよ!
凶に決まってんだろ‼ おまえは! 」
「 吉 」
「 はー 良かったですね それは
学問とかそーいうのは どーだったんだよ 」
「 なんか
全力で臨め的なことが 書いてあった ・・・ 」
「 おう 望めよ! ん 矢野! 」
「 あ えっと じゃあミルクティ ・・・ 」
「 金ねーわ‼ 」
「 へっ 」
「 残念だったな! 俺の金がなくなるのが先だったわ!
おまえだけ なし! わははは 」
「 えっ‼ ずっ ずるい‼
今じゃなくていーから あたしもなんか欲しい‼ 」
「 ちっ 欲のかたまりだな 」
「 いや 缶コーヒーでいーから! けしごむとかでいーから‼ 」
「 おまえ もらうくせに いーからとか ・・・ 」
「 物じゃ なくてもいーの‼
・・・ 合格! したら‼
合格したら‼ ごほうびに‼ 」
「 考えといてやる!
絶対 合格しろよ‼ 」
「 う ・・・・・・ ・・・ うん‼
・・・・・・・・・ がんばる‼ 」
試験が目前となった今、彼女は荒井の采配により、ヤル気を満タンにする事が出来た。
育児や教育に積極的である。
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