4巻 episode 12. とくべつ
黒沼には一つ、困り事が有った。
それは、彼女が風早を意識するあまり、彼と上手く話せなくなってしまった事だ。
彼に話しかけられても、胸の高鳴りがドキドキと邪魔をして言葉が上手く出てこない。
彼女はそれを悟られないよう目一杯に隠していた。
そんな彼女が最近友達になった胡桃沢から、悩みが有るなら相談に乗るとの話を受けた。
男子達に人気が有り、可愛くなるための手本になる胡桃沢であれば、何か良い話が聞けるかもしれないと彼女は期待した。
「 やっぱり男子と女子は 勝手がちがうのかな? 」
「 あはは 意識しすぎなんだよ 〰〰〰〰 ‼
ん ――
風早のことを中学の頃からよく知っているわたしが思うには ―――
風早は 昔から浮いてる子 ほっとけなくて
誰とでも ・・・・・・ だ ―― れでも 普通に話すから
相手が爽子ちゃんでも 普通に話しかけると思うのね?
・・・・・・ だから ・・・・・・
風早が話しかけるのは別に特別なことじゃないんだから
そんな かまえなくていーんじゃないかと思うんだけど ・・・・・・
あ ―― でも 風早と爽子ちゃんはタイプが違うからな 〰〰〰
それを思うと ・・・・・・
同じ男子でも爽子ちゃんと似たタイプの方が 話しやすいかもしれないね
やっぱり 人それぞれ立ち位置みたいなものってあるし
「 ウン ウン あ ―― ・・・ なるほど そっか ・・・・・・
だから風早くんとくるみちゃんは 話してて とっても自然なのかな? 」
「 あはは そーかな⁉
わたしたち ・・・・・・ ちょっと似たようなところあるからなあ ・・・・・・・・・ 」
「 すご ――― い‼
仲いーもんねぇ くるみちゃん ・・・・・・ ⦅ いいな ―― ⦆ 」
「 え ―――― ‼ 仲いーなんて そんな! ふつーだよぉ!🌸🌸🌸 」
「 えっ 普通なの⁉ そーなの⁉
わ ―― 普通のレベルって高いんだな 〰〰‼ そーなんだ 〰〰 !!! 」
「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ✖ 」
そっか くるみちゃんで普通なら
私なんかは緊張して当然かも
最初はあいさつも ろくに出来なくて
それが普通だったのにね
男子と話すには殊更奥手な黒沼であるが、そこが彼女の可愛いところでも有る。
話を全て信じてしまった彼女は、胡桃沢の狙いに気付いていなかった。
ついに体育祭の日がやってきた。
ソフトボールの試合前に、キャッチボールで肩慣らしを始める風早。
彼は、観客に混ざってこちらを見ている黒沼に気付くと、爽やかな笑顔で彼女に手を振った。
人見知りをしない。
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