4巻 episode 14. 恋愛感情
ソフトボールの試合に勝った風早は、仲間達と肩を組んで喜んだ。
小学生の頃はリトルリーグ、そして中学校に進学してからは野球部に所属していた彼は、今は野球から遠ざかっていても、この試合では十分に存在感を見せた。
仲間達と勝利の余韻に浸ったところで、彼にはもう一人、喜びを分かち合いたい人がいる。
それで彼は黒沼の事が気になった。
彼は黒沼が座って観戦していた辺りを見回したが、そこには彼女の姿が見当たらなかった。
試合では彼女がずっと自分に見とれていた事を知らない彼は、俺の活躍ぶりを見ていてくれただろうかと気になる様子で、移動する人群れの中から彼女の姿を探していた。
彼はこの時、こうも思った。
それにしても、彼女が無事で本当に良かった。
出来ることなら俺が黒沼を助けたかったけど、龍には本当に感謝だ。
試合前に皆で肩慣らしをしていた時、彼女の顔に襲いかかったボールから、親友の真田 龍が間一髪のところで助けてくれた事に、彼は幸運を感じていた。
男子のソフトボールの試合が終わった後、黒沼は真田と二人だけで話をした。
彼女は真田に助けてくれたお礼を言う事の他に、彼に確かめたい事が有った。
「 あの 実はちょっと 真田くんと喋りたくて! 」
「 ・・・・・・・・・ 何? 」
「 恋愛感情って どんなのか わかるかな⁉ 」
「 恋愛感情? 」
「 つまり すきっていっても友達同士じゃなく とにかくとくべつな 」
「 いや 説明はいい ん ―――― わかるよ 」
「 えっ‼ 」
「 俺は 千鶴ひとすじ 内緒な 」
「 わ ―― っっっ ・・・・・・ すごく ・・・・・・ すごくお似合いだと思う‼ 」
「 ベタぼめだな 」
「 真田くんは いつから吉田さんのことが? 」
「 いつからだっけ 」
「 きっかけとかは ・・・・・・・・・・・・ 」
「 なんでだっけ 」
「 ・・・・・・・・・・・・ どうしてとくべつって わかったの? 」
「 ん ――― と それ 理屈で答えねーとだめなの?
・・・・・・ 気づいたら もうずっと とくべつだったよ
他とは比べられねーもん 」
「 ・・・・・・・・・・・・・・・ く ・・・・・・・・・
・・・・・・ 比べられないのは とくべつかな ・・・・・・・・・! 」
「 ・・・・・・・・・ さあ ・・・ そーだったらいーの? 」
・・・・・・ そう だったら ――――― ・・・・・・
・・・・・・・・・ はじめてのことで
本当はちがうのか
本当にそうなのかはわからない
・・・・・・ だけど 自分の気持ちを優先したら
この気持ちが恋だったらいいって
恋であってほしいって
強く 強く 強く思った
彼女のヒーローになれる。
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