5巻 episode 17. ライバル
体育祭が終わり、この日の夜はクラスの仲間達で打ちあげが行われた。
熱気のこもるカラオケ店内に集まった若者の中には、マイクを手に熱唱する風早の姿が有り、この席には黒沼も参加していた。
ここに集まった、お祭り好きな者達は、皆が笑顔で明るく弾けている。
皆と数曲歌い終えて、マイクを置いた風早も上機嫌だった。
皆が楽しんでいるなか、彼は黒沼も楽しめているか気になった。
更に言えば、彼女は俺の歌を聴いていてくれただろうかと・・・。
少し自信を浮かべた表情で、彼女の方を見たのだが、あいにく席に彼女の姿が無い。
この様な状況は、つい最近にも彼は経験した事である。
先程まで大人しく座っていた黒沼ではあるが、正直それどころでは無かったようだ。
なぜなら昨日、彼に恋している事を矢野と吉田に打ち明けてからというもの、彼女達は興味津々で尋ねていた。
「 えっ 風早を‼ へ ―― っ そうなんだ‼ 」
「 やっぱり そうだったか‼ 」
「 そっか ―― 何がきっかけで すきだって気づいたの? 」
「 きっかけ ・・・・・・ ・・・・・・それは・・・・・・
・・・・・・・・・やっぱり くるみちゃんかなあ・・・・・・ 」
「 くるみか ――
男のために よくそこまでアグレッシブにうごけるよな ――
ある意味 尊敬 あたしムリ 」
「 あ ・・・ あたしはどうだろう もしかしたら ・・・・・・
鬼にもなってしまうかもしれん ・・・・・・! 自分がこわい‼ 」
「 えっ 誰の話?
とにかくさ よかったね爽子! ふふふ♡ 」
「 これからもっと楽しくなるぞ ――‼ ばんざ ――― い♡ 」
この様な昨日の恋話の続きが、打ち上げの場にも持ち込まれた。
クラスの仲間達が賑やかにカラオケで盛り上がる一方、隅の席では矢野と吉田に挟まれながら話の続きを赤裸々に打ち明けた。
「 そんで? 」
「 そんで⁉ 」
「 いつからすきだったの⁉ 公開告白ん時は⁉ 」
「 公開・・・・・・ 」
「 いや あんときは まだでしょ―― 」
「 ―――― ・・・ ・・・・・・ もう 恋愛感情だったと思う 」
⦅ ・・・・・・いつからだろう こんな気持ちになったのは ⦆
熱気に包まれた部屋の中、黒沼は嬉し恥ずかしさのあまり顔が火照り出してのぼせてしまい、高揚した気分を落ち着かせるために熱い部屋を出ていったという訳だ。
風早は矢野に尋ねた。
「 黒沼は? 」
「 あー爽子ちゃんね!
なんか顔がほてるとか言って 外で涼んでるわ
一体誰がほてらせたのかしらねっと! フフフッ♡ 」
風早の心を掴む事の出来た女子は、黒沼を除き、これまで誰一人として現れなかったのだが、そんな彼女の心を掴んでいる事を、彼は全く知らない。
自分の得意な歌を持っている。
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