1巻 episode 2. 放課後
二学期が始まってから、席替えした風早のクラス。
席はくじ引きで決められたが、彼は他者とくじを交換した事で、上手い事に黒沼の隣の席を手に入れていた。
席替えは、黒沼にとっても幸運だった。
隣の席に私を気遣ってくれる王子様が来てくれただけでなく、彼女に友好的な人物が席を囲むように集まったからだ。
その人物とは、矢野 あやねと吉田 千鶴という二人の女子である。
休憩時間になると、黒沼を囲んで彼女達の会話が早速始まった。
「 あたしと風早と龍は 元々 中学一緒で 」
「 あたしは中学別だけど
あたしとちづは 入学して席近くて仲良くなったわけ
ちづと龍は幼なじみなんだよね 」
「 それで みんな仲良しなんだあ ・・・ 」
「 まあ悪かないね そーいや貞子
あんた公開失恋のわりにゃ風早と普通に喋ってんね 」
「 ほんとうに 分けへだてなく接してくれて ・・・
感謝のあまり 言葉がみつからないくらい ・・・ 」
「 あー なんせ爽やかくんだから‼
冗談みたいに爽やかだから‼
ほんと 冗談なんじゃねーかな‼ 」
「 ず ―― っと あんななの? 」
「 も‼ ず ――――――――― っと あんなん‼
クラスで浮いてる奴とかほっとけなくて
しかも男子の中心で そりゃもう もってもて‼
中学ん時 女子同士でもめてさ 〰 でも
そんなんでもめるような女を風早は大っ嫌いだろうと
気づいた女子たちが最終的に作った協定が
『 風早は みんなのもの協定 』‼ 」
「 みんなの風早くん‼ ばっかばかし ―― !!! 」
「 だから なにげにうちの中学出身の女子多いんだよね 〰〰 この高校 」
「 あぁ たとえばアレとか 」
「 あ ―― そうそうアレとか! 同中 同中! 」
「 王子様大忙し 」
「 王子様てんてこまい 」
彼女達が揃って視線を向ける先には、風早が教室の出入口で別クラスの女子達に呼ばれている姿があった。
「 あっ 風早 ―― 」
「 お ―― ちょっとまって ―― ! 」
「 これ聴きたいって言ってたでしょ ― 」
「 貸してくれんの ⁉ やった ―― ‼ 」
この女子達に好意を持たれている事を知ってか知らずか、彼は笑顔で対応していた。
彼なら例えモテ過ぎてしまっても、困り顔や申し訳ない顔一つしないだろう。
心に愛の沢山詰まった男、風早。
どうやら彼は、遠く離れてしまった友人とも連絡を取り合えるような性格である事が窺える。
それが真の友人であれば疎遠にはならないし、疎遠にはしない。
慕われ続くように努力できる。
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