10巻 episode 39. 告白
「 風早くんに会いに来たの
・・・・・・ 風早くんに ・・・
・・・・・・ 言いたい事が あってきたの ・・・・・・! 」
緊張感の伝わる黒沼の真剣な声に、風早の話は遮られ、彼は注意深く耳を傾けた。
「 ・・・ このままでいい きいてほしい 」
少しだけ開いた戸の後ろで、殆ど顔を隠しながら瞳を閉じ、勇気を出して話を続ける彼女。
「 私 ・・・・・・ あの時の風早くんと 全く逆のことしてた
・・・・・・ だから今度は 「 ごめんね 」のかわりに ・・・・・・ きいて ・・・・・・
笑ってくれて ありがとう
話しかけてくれて ありがとう
・・・ やさしくしてくれて ありがとう
・・・ 私に ・・・・・・ 今までしらなかった気持ちをいっぱい教えてくれて ありがとう
すきなの
・・・・・・ すきなの すきなの すきなの ・・・・・・・・・ すきなの すきなの ・・・・・・ 」
彼女が頑張って話してくれている今まで、風早は知らなかった。
これまで彼女に接して来た事が、結果として彼女を困らせてしまったと思っていたのに、本当はこれほど感謝されていたなんて・・・。
俺の「すき」と彼女の「すき」は意味が違うと思っていたのに、目前で彼女が精一杯に何度も「 すきなの 」と告白して思いの丈を伝えてくれている様に、ずっと彼女に好意を寄せてきた俺の気持ちと本当は全く同じ「すき」だったなんて・・・。
彼女から感動的な返事を受け取り、緊張から解放された風早にとって、二人を断ち分ける壁の様な戸は、もう邪魔でしかなかった。
彼は告白してくれた彼女の気持ちをもっとしっかり受け取りたくて、恥ずかしがる彼女の制止を振り切ると、小開きの戸を感情に任せて目一杯に開けた。
涙もろく、赤面している彼女の表情と仕草が可愛くて堪らなく見えた彼は、又しても泣かせてしまった彼女の手を取ると、懐に引き寄せる様に教室に誘い入れ、静かに戸を閉めた。
込み上げる想いを抑えられない彼は、そのまま彼女を強く抱き締めた。
夕日が奥まで差し込仕込んで来る熱い教室で、ようやく二人の恋が実を結ぼうと、想いが一つになり始める。
風早の腕に包まれた黒沼には、彼の高鳴る胸の鼓動がいつまでも伝わっていた。
愛情表現が出来る。
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