11巻 episode 46. デート
黒沼と初デートとなる記念すべき日を迎えた。
風早はどんなデートにすれば喜んでもらえるのか色々と考えて、昨夜はあまり眠れなかった。
彼女と何処に行こうか、何を食べようか、何を話そうか・・・
一人で計画を練るのは意外と難しく、デートを成功させたい強い気持ちが彼を緊張させた。
時間が近づくにつれて落ち着かなくなった彼は、昼に待ち合わせでも余裕を持って家を出た。
『 きっと黒沼も、もうすぐ来る。』
彼は待つ事を苦にしないで、そんな事を思いながら落ち着いて待ったのかもしれない。
案の定、彼女も予定より早くやって来た。
彼女の白い肌と同じくらいに印象的で可憐な薄手の私服姿が正に初夏を感じさせ、制服姿では味わえない新鮮さが彼を一目で萌えさせた。
今日のデートのために彼女が相当な気合いを入れてきた事を窺い知れた彼は、嬉しくて照れた顔をいつもの爽やかな笑顔で上手く隠していた。
『 今日の黒沼はとびきり可愛いい! やっぱり俺の見る目は正しかった! 』
きっと彼は、そんな風に確信した事だろう。
夏の妖精を思わせる今日の彼女は、その体にそぐわないほど大きな鞄を肩に携えていた。
その鞄の大きさが、そのまま彼への想いの大きさを表している事を、彼は勿論気付かない。
そのため風早はデートが始まって早々に、黒沼に驚かされた。
まず初めに、彼女が用意してくれた手作りお弁当に驚いて喜んで、その愛情の込められた深い美味しさに感激して、行儀良くゆっくりと味わう彼は、感極まって涙目になった。
それから彼は、遅れて受け取った突然の誕生日プレゼントにも驚かされた。
彼女らしさを感じるプレゼントの数々に、毎回違う反応を示して喜ぶ風早が微笑ましかった。
芝生の上でくつろぎながら、お弁当をご馳走になった後、二人は仲良く存分にデートした。
黒沼からお返しを沢山貰った風早は、ずっと大事にすると約束した通り、彼女を気遣った。
彼女の希望を聞き、何でも疲れさせない様に程々にして、飲物を手にして休憩した。
また、プラネタリウムに入った時には彼女を強い冷房から守るためにブランケットを用意する事も有った。
まだ何かが入っていて膨らんだままの鞄を抱える彼女の肩を心配してみたし、帰り道では足元のふらついた彼女にそっと手を添えて支えた事も有った。
この様に、二人で楽しく過ごした初デートは全てが上手くいった。
黒沼は最後まで色々と用意してくれたし、風早の思いやりも見事だった。
黒沼は風早を沢山喜ばせられたし、風早は黒沼の幸せな顔を沢山見る事が出来た。
一緒に遊んで色々な所を散策し、一緒に食べたり飲んだりして、一緒の空気に触れて同じ事を感じて、お互いに時間をゆっくりと共有した事で気持ちの繋がりを得られた二人には、きっと何か新しい発見を得たに違いない。
彼女への愛が報われた風早にとって、「 一生忘れない 」幸せな初デートとなった。
相手に「ごちそうさまでした」や「ありがとう」を言える。
相手の欲求を見抜くのが上手い。
嫌われない触れ方をする。
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