2巻 episode 5. 本音
今日は中間テストの日だった。
テストを終えた風早は、対策で黒沼から問題の解き方や要点を教わっていた事で、それなりの手ごたえを感じていた。
しかし、彼には一つ心配事が有った。
彼の力になってくれた黒沼の事だ。
彼女はテストの数日前から様子が変わり、今では会話する事さえ難しくなっている。
彼女の変化に気付き始めたのは、彼を避けるような態度を彼女が示した時からだ。
その時に一抹の不安を覚えた彼は、単刀直入に聞いた。
「 俺 もしかして なんかした?
嫌われるようなこと 俺、なんかやった? あるなら言って‼ 」
「 してない! してないよ! 」
「 ほんとに⁉ 」
「 ほんとだよ! 風早くんは なんにもしてないよ! 」
「 ・・・ な んだよ ―――‼ も ―――‼
・・・ よかったぁ さけられたかと思った 」
「 もし ・・・・・・・・・・・・ この先なにがあったとしても ・・・・・・・・・
嫌うことなんて ・・・・・・ 絶対にないよ ・・・・・・
何があったって ・・・・・・・・・・・・・・・ 絶対にないよ ・・・・・・・・・・・・ 」
これを聞いて彼は胸を撫で下ろしたのだが、彼女の様子は以後も変わらぬままだ。
黒沼をそっと観察していた彼は、彼女が何か困っているのではと推察し、尋ねた事が有った。
思えば、仲良くなり始めていた矢野や吉田とも会話していない事に気付いた彼は、もしかして彼女達とケンカでもしたのだろうかと心配する事も有った。
理由がわからぬまま彼は、彼女から意図的に距離を取られているように感じていた。
テストが終わり、帰宅していく生徒達。
風早は仲間達を先に帰すと、校門を出た所で黒沼を待った。
話しかけても理由を付けて逃げてしまう彼女だから、待ち伏せて捕まえる事にしたのだ。
しばらくすると、彼女が落ち込んだ様子でやって来た。
彼は歩み寄り、彼女の足を止めた。
「 ・・・・・・・・・ やっぱ 納得いかないんだけど
嫌いじゃないなら なんで さけんの? 」
「 ・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・ 私と ・・・・・・・・・ 喋らないで ・・・・・・・・・・
って やっぱり言えません 〰〰〰〰〰〰
やっぱり思ってもいない事はいえないよ 〰〰〰〰 」
そう言って、急に大声で泣き出す彼女に風早は驚いた。
「 えっ 何⁉ 」
「 株が落ちたらごめんなさ 〰〰〰 い うっうっ・・・
なんでもいいからそばにいたいよ 〰〰〰 ううう ・・・ 」
「 待っ ・・・ 黒沼! ちゃんと喋ってくんなきゃ わかんない 」
「 ・・・・・・ 私が周りにいると 株が落ちるって ・・・・・・ 」
「 株⁉ 誰が言った⁉ 」
「 う ・・・ 噂で ・・・ 」
「 噂⁉
株とか噂とか ・・・ そこに俺の意志はどこにもないじゃん!
それは黒沼の決める事じゃない 俺が決めることだ!
俺は ・・・・・・ 俺のしたいようにするよ
黒沼と喋りたければ喋るし 喋りたくなかったらこんな風に喋ってない!
・・・ 噂なんてどーだっていい 俺にとっては俺が見てる黒沼だけが黒沼だ‼ 」
彼女が風早達と距離を取るようになってしまったのは、女子生徒に広まる彼女と矢野や吉田についての誹謗中傷が原因だった。
出所が不明で信憑性が無く、有りもしない事が噂となって女子達の間で出回った事が、彼女を苦しめていたのだ。
大切にする。
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