風早翔太に学ぶ!モテる秘訣 ‹ 52 ›

13巻 episode 52. 風早家

講習期間が終わり、もうすぐお盆を迎える頃には、北海道の夏も終わりに近づいていた。
風早は沢山の課題を早く終わらせたくて、一つ良い方法を思いついた。
黒沼と一緒に取り組みながら、ついでに勉強も教えてもらうのである。
この案には彼女を家族に紹介する目的も有り、実は彼にとってこの目的の方が重要な事から、彼は風早家に彼女を招いて課題に取り組む約束を取り付けた。
飼い犬(マル)の散歩コースで彼女と待ち合わせをした彼は、マルの散歩を久しぶりに彼女と楽しみながら自宅まで案内した。
しかし、彼は少し不安だった。
彼女は俺の家族を気に入ってくれるだろうか?
スポーツ用品店を営む自宅の自動ドアが開くと、彼は店の奥にいる母にいつも通りに言った。
「 ただいま ――――――! 」
息子の帰りに気付いた母は、早速さっそくショーガラスをくように頼んだ。
そして、息子が初めて連れて来た彼女を笑顔で迎えると、とても喜んで彼女と話し始めた。
店に入るまでは緊張していた彼女であるが、それが母を見るなり瞬く間に解けた。
一目見た時から感じた母の雰囲気といい、息子とのやり取りから感じた親子仲の良さといい、母と彼がとても似ていたからである。
「 こんな息子でごめんね 」
「 こんなかあちゃんでごめんな! 」
風早家は二人兄弟であるために娘が欲しかった母は、黒沼の象徴的しょうちょうてきな、長くて黒くつやの有る美しいかみを大変気にった。
実は彼女自身も気に入っているこの髪を、彼の母にめられた事に感激していた。
彼は入荷したばかりの新商品の対応に追われる母を、手慣れた様子で手伝い終えると、事前にしっかり綺麗きれいにしておいた自室へ彼女を通した。
彼の部屋に上がった彼女は、台所でお茶をいれている彼が戻るまで大人しく待った。
それでも大好きな彼の部屋で少し興奮気味になってしまった彼女は、色々と物色ぶっしょくしたくなる気持ちを抑えつつ、彼の世界観に包まれた部屋を隅々までチェックし始めた。
すると、まだ何も手を付けない内に、彼が座布団に羊羹ようかんとお茶を持って戻って来た。
ほおを赤く染めながらドキドキした様子で立っている彼女を見て、不思議に思った彼はたずねた。
彼女は彼の秘密を暴いてしまう様な、見てはいけない物を発見してしまった雰囲気だった。
そして若い男子の部屋には結構有り勝ちな如何いかがわしい物ではと、沢山の本とCDにまぎれながら部屋の片隅かたすみで見付からない様に静かに眠る、あやしげな箱をそっと指摘した。
( ヤベッ‼ しまった‼ どうしよう‼ 上手く隠したつもりだったのに・・・‼ )
などと、彼に限って思うはずは無く、彼はその箱を持ち出すと平気で黒沼に差し出した。
箱の中から出て来る未整理の品々には、思い出深い写真の数々が含まれていた。
二人の思い出とも言えるそれらの写真に目を通しては話に花が咲き、話している次第にとても甘くて良い雰囲気になり始めた。
二人きりの部屋で、ベッドに座って見つめ合う状況に、二人は必然的にお互いを意識した。
「 ・・・ だめだ この距離!   ・・・ 勉強する! 」
真面目に健全に付き合うと、固く心に誓っている彼は、話を中断して気を引き締めた。

黒沼と課題に取り組むだけでなく、家族と会わせたかった。

    恋人を家族に紹介する。

「 ただいま――――――! 」と聞こえるように言った。

    「 ただいま 」を言う。

店の仕事を手伝った。

    家の手伝いをする。

前もって綺麗きれいにした部屋へ案内した。

    迎える前に綺麗きれいにする。

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