風早翔太に学ぶ!モテる秘訣 ‹ 55 ›

13巻 episode 55. 修学旅行

修学旅行の日がやって来た。
北海道を飛び出した風早達2年生は、初めての沖縄に浮かれずにはいられなかった。
順調に飛行機に乗り込んだ彼が席でくつろぐと、隣では黒沼達がお菓子を分け合って食べていた。
その仲の良い様子を微笑ましく見ていた彼も仲間に入れて欲しくなったのか、手に取った1本の長いお菓子を彼女の目の前に差し出した。
「 黒沼! はいっ ど ―― ぞっ! 」
「 ありがとうっ 」
彼女も例外無く浮かれていたのだろう、差し出された目の前の美味しそうなお菓子をはしから端までじっくりと見つめると、驚いた事に口で直接くわえ込んだ。
ず手でつかんでくれると思っていた彼は、その思いがけない行動に心のすきかれてしまい、軽薄にも人前で浮ついた行動を反省しながらも、くわえ込んだ彼女の表情の可愛らしさに心を奪われて照れてしまうのだった。

初日は移動日という事であり、沖縄に到着してからはホテルに直行した。
私服に着替えた彼は、夕食までの少しの時間に仲間達を連れてホテル内を見て周る事にした。
ホテルの窓から見える海辺の景色は最高で、彼らの視界に入る物は何もかもが刺激的だった。
それから彼らは売店までやって来た。
お土産売り場では観光客や多くの生徒達の他に、矢野と吉田の姿も見受けられた。
風早に気付いた矢野は、彼を喜ばせてやろうと手招きを繰り返して声をかけた。
「 風早!  ちょい ちょい ちょい 」
なんでも彼女の話によると、先日に黒沼達と旅行用品を買い揃えた際に、とても良い買い物が出来たので、その自慢話をしたいらしい。
しかし、耳元に小声でささやく彼女の最後の言葉に彼は驚いた。
「 さわこ ○○パン ♡ 」
彼は、聞き間違えたのではないかと耳を疑った。
その様なパンなど、勿論もちろん食べた事が無ければ、見た事も無い。
それに、黒沼がその様なパンを好むとは到底思い及ばない。
しかし、彼女の話によれば、それはまぎれもない事実なのである。
突然の確かな㊙情報に、彼は喜んで良いのかわからなかったが、彼女にからかわれまいとして平静を装っていると、そこへ私服に着替えた黒沼も遅れてやって来た。
普段では見られないカジュアルなファッションに身を包んだ彼女も、やはり可愛らしかった。
真面目で清楚な彼女がまさか今、その様な魅惑品に手を付けているとは少し信じ難いけれど、彼はその美しさを想像せずにはいられなかった。
もしかして、俺の事を色々と想ってくれて、それを選んだのだろうか?
いや、そうではなくて最初からそういうのを好む人だったのだろうか?
彼がどの様に思いを巡らせていたのかは不明であるが、魅惑の力を手に入れた彼女を前にした彼の頭の中はその事ばかりになり、意識を禁じ得なかった。
しかし、どちらかと言えば、彼女の内面にかれて好きになった彼は、真面目で純粋で綺麗なお嬢さんである彼女の外面を、好色な視点で見る事に背徳感を感じていたのは間違い無い。
いずれにしても、彼は㊙情報ついて探る事は無く、皆で美味しい食事を済ませた後にはお風呂に入って気分もさっぱりさせた。
その後、自販機の前に集まる彼らの所へ、行動が少し似てきた黒沼達もやって来た。
彼は自販機に小銭を入れながら、彼女には何を買うつもりなのか聞いてみた。
「 黒沼は? 」
「 あっ 私はさんぴん茶をっ 」
『 ゴトン! 』
彼がさんぴん茶のボタンを押したのを見て、彼女は慌てて財布を取り出した。
「 あははっ 」
以前にも有った、こんなやり取りを思い出した彼は、律儀りちぎな彼女に笑顔で手渡した。
「 はいっ タダです! 」
「 ありがとう 」
恋人の特権でおごってもらえた事を理解した彼女は、嬉しくて自然に笑顔がこぼれた。

黒沼は彼がくれたお菓子を喜んで食べた。

    相手が喜ぶお菓子を選ぶ。

彼は内面で黒沼を好きになった 。

    内面を重要視する。

黒沼に飲物を買ってあげた。

    恋人には絶対にケチらない。

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