風早翔太に学ぶ!モテる秘訣 ‹ 60 ›

15巻 episode 60. 終わったんだな

修学旅行を終えて、生徒一同はすっかり秋めいている北幌の町に帰って来た。
黒沼は自宅に矢野と吉田を招き入れ、持ち寄った写真の出来映えに盛り上がった。
楽しかった思い出を振り返るうちに、風早に渡したい写真も何枚か出てきた様子だった。
彼女達が渡したい写真となれば、きっと良い思い出ばかりの写真なのだろう。
今回の旅行では、いつまでも色あせない良き思い出となる写真を沢山撮れたため、彼の部屋にそれらの写真を飾ってもらう事を期待出来た。

ある日の事、教室では矢野が風早に声をかけていた。
「 あっ 風早!  いいものやるよ――  大事にすんのよ―― 」
「 ん?  あ 写真? くれんの?  さんきゅー 」
彼は矢野に礼を言って写真のつつみを受け取ると、その場で早速中に手を入れた。
すると彼女は、写真を嬉しそうに取り出す彼の耳元に手を添えると、小声でささやいた。
「 爽子の ○○○写真 」
彼女の冗談をに受けて驚いた彼は、手を滑らせて写真を全て床に落としてしまった。
「( そんなお宝写真 あんたなんかに )やらないよ? 」
と言って、からかう矢野。
「 いらねーよ‼ 」
と、対抗して彼は強がった。
近くにいた黒沼が床に散らばった写真を拾い上げると、彼女は酷くショックを受けた。
彼女が拾った最初の一枚は、可愛い仕草で微笑む清純派アイドルを思わせるパジャマ姿の彼女を矢野が撮ってくれたものだったからだ。
矢野が彼女に黙ってこの写真も含めておいたのかもしれないが、私個人の写真はいらないんだと誤解した彼女は落ち込み、残念そうな暗い表情で回収を申し出た。
「 えと ・・・ これ ・・・
  いらなかったら私 回収するので ・・・
  えんりょなく言ってくれたら     」
「 いやっ もらうっ  もらう ありがとう‼ うん! 」
彼は危うく本当に傷付けてしまうところだった彼女から写真を全て有難く受け取った。
この中にお宝写真は無くても、部屋に飾れる写真が有れば、彼はそれで十分だった。
彼女に悪い事をしたと思った彼は、彼女と一緒に帰る約束をした。
彼は修学旅行で強要に近いキスを彼女に迫ってしまった事で、彼女をずっと大事にするという約束を二度と忘れずに守るために、高校2年生らしい健全な交際について深く考えていた。
それは、一緒に帰る彼の様子から見て取れた。
彼は会話が少し減ってしまい、彼女の方をあまり見なくなっていて、手は繋がずにポケットに入れたまま歩いた。
彼はみずからを甘やかさない様にりっしていた。
欲張りな感情を自分で止める良い方法が見付からず、そうなってしまった。
ただ彼女としては、付き合い始めた頃は手を繋いだり名前を呼んだり沢山話してくれたのに、少し開いた気のする彼との距離に寂しさを感じていた。

写真を有難く受け取った。

    彼女の写真を大切に飾る。

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