風早翔太に学ぶ!モテる秘訣 ‹ 61 ›

15巻 episode 61. そんなことないよ

風早と黒沼のぎこちない関係は、その後も続いた。
ある日の教室で、彼は三浦から彼女を貸してもらえるよう許可を求められた。
「 ・・・ いい? 風早  貞子ちゃんと二人でしゃべってきても 」
「 ・・・ 黒沼は 黒沼のしゃべりたい奴と喋ればいーよ  物じゃないんだから 」
何か晴れない表情をした、いつもの彼らしくない反応が隣にいた彼女と三浦に返ってきた。
彼女が三浦と何処かで二人きりになって話をしても、彼は特に心配無用であった。
三浦が前もってきちんと了解を取り付けてきた事で、嫉妬しっとする事も無かった。
近頃の彼が ” らしくない „ のは、彼女との健全で好ましい付き合い方を模索していて接し方をつかめていなかっただけでは無く、実は親友の真田が修学旅行中に吉田に告白してふられた事も少なからず影響していた。
事情をつい昨日に真田の口から知った彼は、幼馴染である吉田との関係がこれからどうなってしまうのかと気になっていた。
彼の気がかりを助長する様に、いつも壮健そうけんな吉田が今日は学校を欠席している。
今まで通り普通に冗談でも言いながら、何でも話せる幼馴染として付き合っていく事を難しく感じていた吉田は、これからどの様に真田と向き合っていけば良いのかついに分からなくなり、皆の目から逃げ出したのだった。
真田とは親友や姉弟きょうだいの様に付き合ってきた吉田は、彼との居心地の良い特別な関係が終わりを告げた事を嫌でも気付かされた。
朝に目覚めても、いつもの元気が全く出て来なかった彼女は、制服に着替えて家を出た後で、彼女にとって思い出深い波止場へとおもむき、そこで自分を見つめ直していた。
その一方で、吉田が珍しく体調を崩して休んだと思っている矢野と黒沼は、携帯電話で連絡のつかない彼女を心配して、帰りに彼女の家へ立ち寄る事にした。
「 あやねちゃんと ちづちゃんちに寄って帰るね 」
恋人らしく風早と連絡を密にする黒沼に、彼は何か事情でも知っていそうな反応を示した。
「 吉田の?  あ ――― ・・・ ( うーん 家にいんのかな ) 」
ずる休みの可能性も否めないと思っている彼が言葉を詰まらせると、黒沼は不思議に思った。
彼は何か知っているのだろうか?
知っているならどんな些細ささいな事でも話して欲しい。
「 ・・・ あの ・・・・・・ どうかしたかな ・・・ 」
「 あ イヤ   なんでもないよ 」
やはり何か不自然さを残す彼の反応に、彼女は何か隠していそうな彼をジッと見つめた。
彼女だって1年生の頃から彼の事をずっと見て来ているから分かるのである。
心中を読みたがる様な疑いの目で見られていると感じた彼は、彼女の無用な心配を取り払う様にもう一度言った。
「 なんでもないよ 」
何か隠していると直感的に感じた彼女であったが、彼の二度目の言葉は信用に値した。

三浦と二人きりで話す黒沼を信用し、吉田の事を探る黒沼から信用を得た。

    お互いに信用関係を築ける。

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