15巻 episode 62. 今はもう
ここから続く2つの episode は、吉田 千鶴と真田 龍が主役として描かれているため、風早は殆ど登場してきません。
そのため二人から良いと思った所を書き記してみます。
幼少期から人知れず、吉田だけを見て生きて来た真田であるが、遂に彼女に告白するに至ったのは、高校生の二人にとって自然な成行きに思われた。
数か月前の夏休み、部活動で浜辺を走り込んでいた彼は、そこで皆と海水浴に来ていた吉田を偶然にも発見し、休憩中に彼女の手を引いて浜辺を散歩した。
これまでに経験した事の無かった彼との遊び方を不思議に思った彼女が、この時を境にして彼と少しやりにくく感じ始めたのは、彼女が彼を恋愛対象としていなかったからである。
これまでの二人の関係に影響を与える出来事はその後も続いた。
秋の修学旅行中、彼は他クラスの女子から恋の告白を受けていたのだが、彼は好きな人がいる事を理由に交際を断っていた。
その当時、彼は複雑な気持ちになって腹を立てていた吉田に以下の言葉を述べている。
「 ・・・ うれしかったんだよ
千鶴が
ちょっとでも俺の好きな奴を気にしてんのが
・・・・・・ うれしかったんだよ
俺が すきなのは ずっと千鶴だよ 」
彼女は感動してくれなかった。
幼馴染みであり、親友や姉弟の様に彼と接して来た彼女は、好かれていたのは知っていても、まさかの恋愛感情であるとは思っていなかった。
それからも、二人はこれまで通りに普通に話し、用事が有れば家にも行った。
「 つきあっちゃえばよかったのに 」
と、勧める矢野に対して、恋愛感情が無いにも関わらず男女交際する事など出来ない彼女は、これまで通りに彼とは親友、姉弟関係を望んだ。
しかし、その様な関係は事実上の終わりを迎えた事を感じている。
彼女は、この先どんな顔で彼に会って接すれば良いのかわからなくなってしまった。
それで彼女は学校を休んで皆には内緒で港へ行き、そこでぼんやりと海を眺めた。
波止場で腰を下ろし、海の向こうを見つめながら思い耽った。
海が夕日に染まる頃、幸いな事に、授業を終えた仲間達が探して駆けつけてくれた。
彼女は心配してくれる皆に、つい子供っぽくなった。
「 もう 今までみたいにはできない
もう ラーメン食べに行けない
ふたりでゲームとかできない
くだらない話も
初もうでも ―――
もう 姉弟じゃない 」
今まで大切にして来た彼との居心地の良い関係が終わってしまった事に悩む彼女。
親身になって耳を傾けてくれる仲間達に、彼女は思う存分に甘えた。
良好な人間関係、社会的関係を築いている。
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