2巻 episode 7. 友達
⦅ ・・・・・・ あんなに泣いたってのに
つい 感情にまかせて どなっちゃったなあ ・・・・・・
俺ってだめな奴 ・・・・・・ ⦆
黒沼を苦しめる、下らない噂に頭にきた風早は、彼女に怒鳴ってしまった事を反省していた。
しかし、女の涙に強いという点は悪くない。
誰かに女の涙を武器として悪用されたとしても、彼には恐らく効かないからだ。
問題がまだ解決していないにしても、彼女との関係を元に戻した彼は機嫌が良かった。
翌日、朝の学校で ―――
「 おはよ 風早! 」
「 おはよ! 」
「 おはよー 」
風早は、教室へ向かう先で会ったクラスの皆と挨拶を交わした。
中間テストの勉強で眠そうな仲間達と階段を上っていくと、彼らの目の前には大勢の騒がしい声と共に人だかりが見えてきた。
「 ん、なんだろ なんかあったの? 」
「 あ、風早! なんか女子トイレでケンカだって!
それが! 誰だと思う⁉ 貞子とA組の女子たち! 」
「 黒沼が⁉ なんで‼ 」
「 あ ―― ・・・ 私さっき中にいたけど ・・・
なんか貞子の方から ちづと矢野ちんの噂のことで くいついてたよ 」
そこに集まっている者達の話によると、どうやら黒沼は、彼女がずっと探していた、喜んで噂する一塊を、ようやく突き止めたのだという事がわかってきた。
勇気を出して、その一塊に詰め寄った彼女が今、嘘、噂の撤回を強く求めて戦っている。
女子達だけで起きたデリケートな問題だけに、場所が女子トイレでなかったとしても、彼が間に入る事は許されない。
彼は、見守る事しか出来ないもどかしさに耐えた。
「 か ・・・ 風早ぁ なんか怒らせちゃった ⁇ 」
「 怒ってねーよ! ただ俺は ・・・・・・ 」
彼が続けて話そうとした丁度その時、黒沼と話の片が付いた一塊が、トイレから出てきた。
彼女達は風早がそこに見に来ている事に気付いた様子で、全員が気まずそうに身を竦めた。
何処からともなく生じた噂に便乗して、黒沼を彼から遠ざけようと愉快に楽しんだ女子達。
彼は彼女達を牽制するように、蔑視しながら話を続けた。
「 くだらない噂が 大っきらいなだけ! 」
声を大にして言ったその言葉は、彼女達の耳にしっかりと届くのだった。
下らない噂が嫌いである。