風早翔太に学ぶ!モテる秘訣 ‹ 71 ›

17巻 episode 71. 聖夜

時計の針が9時を指し、パーティーはお開きとなった。
吉田は真田と、矢野は三浦と一緒に帰る事になり、黒沼は皆の帰りを見送った。
解散後のにぎやかな店先には、帰路につく多くの参加者たちが言葉を交わしていた。
一人になった彼女には、外の冷たい空気が身にみた。
彼女は今回のパーティーに参加してみて、どうだったのだろうか。
楽しいひと時を過ごせたのだろうか。
今の気持ちを誰にも気付かれたくない彼女に、幹事の仕事から解放された風早が、硬い口調で声をかけてきた。
「 帰る? 」
「 うん ・・・! 」
彼女からすれば、ようやく話しかけてくれた彼と久しぶりに会った気がした事だろう。
しかし、有ろう事か、この直後、パーティーに参加していた他クラスの者の声が、彼女の耳に入って来た。
「 ・・・ あれ? あの2人まだつきあってたの⁉
  もう つきあってないのかと思ってた    」
この何気無い一言が、彼女を酷く傷付けた。
彼にも聞こえたかどうかはいざ知らず、二人は沈黙したまま雪道を歩き始めた。
彼女はとてもつらくなった。
参加者らの何気無い言葉が彼女を追い詰めた。
「 つきあっている事を隠したがっているのか 」とか、
「 もう つきあってないのかと思ってた 」とか、
彼らが勝手な事を言って、周囲からはそう見られていたんだと知った彼女は、明日から冬休みで会えなくなる彼の背中を見つめながら歩いた。
距離を開けていたのは彼の方だった事に気付いていたために、隣を歩く事に気が引けていた。
そして、追い詰められる彼女の思考は、不安から絶望へと変わっていった。
恋人が出来ても相変わらずモテる彼の事だから、他に好きな人が出来てもおかしくない。
別に私でなくても可愛い子や美人な子は沢山いる、彼女がそう考えたとしてもおかしくない。
彼との距離は彼女にとって、今やもう恋人同士と呼ぶには及ばなくなっていた。
( ・・・・・・・・・ つきあって ・・・・・・ ・・・・・・ いるのかな ・・・・・・
  明日から 冬休みだよ  風早くん
  ・・・ 会えないんじゃないかな このまま もしかしたら ・・・・・・
  いつのまにか  私たちは
  つきあってないことになってるんじゃないかな
  急に 終わっちゃったらどうしようって 思っていたけれど
  もしかしたら もう   もしかしたら もう ――――・・・・・・ )
このまま、風早くんは行ってしまう・・・
私から離れて行ってしまう・・・
終わりく二人の関係を感じた彼女は、それでも彼を信じたかった。
彼を、まだ恋人として見つめていたかった。
いつも優しくしてくれた彼、いつも笑顔を見せてくれた彼、いつも安心させてくれた彼・・・
風早を失う絶望感に耐えられず、元のような関係に戻りたいと強く願う彼女。
この時、必死で何かに頼ろうとする彼女の脳裏に、三浦の応援する声がこだました。
『 ・・・・・・・・・ 貞子ちゃんと風早のぎくしゃくなんて
  目ーつぶって5秒くらい待ったら 解決しそーな気ーするし 』
それは、かつて荒井が教えてくれた方法でもあった。
彼女は最後のけに出た。
彼女は彼のそでつかまえてふところに入り込み、彼を立ち止まらせると、瞳を閉じて顔を上げた。
・・・ して! ―――――
くちびるを向ける彼女の求愛に、彼はただ驚いた。
「 どっ ・・・・・・  ・・・ どうしたの 黒沼 」
彼は顔をらすと、毅然きぜんとして彼女をこばんだ。
キスをしてくれない彼の冷めた反応に、そっと開いた彼女の瞳から涙がこぼれ始めた。
「 ・・・・・・そ つき ・・・・・・
  風早くんの うそつき ・・・・・・!
  次したら わかんないって 言ってたのに うそつき
  悩みがあるのに 「ない」って うそつき
  私 今日は ・・・・・・・・・っ  ただ一緒にいたかった
  風早くんが いっぱい仕事してたのわかってる
  わかってるけど
  でも   ・・・・・・ 1人よりさみしかった ・・・
  私のことで悩んでた?  色々 後悔してる?
  もう すきじゃない?  こんな私 すきじゃない? 」
泣き出す彼女を前にして、彼は深刻なすれ違いをしていた事に初めて気が付いた。
こんな私 すきなわけ ―――・・・
彼女の涙が、ずっと我慢して来た彼の想いを解き放った。
好きだよ  大好きなんだよ‼
彼は彼女をを抱き寄せて、口づけをして黙らせた。
彼は無我夢中で彼女と唇を重ね、二人は何度も強く、お互いを求め合った。

嘘をついて彼女に寂しい思いをさせて泣かせた。

    嘘をつかない。

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