風早翔太に学ぶ!モテる秘訣 ‹ 75 ›

18巻 episode 75. 幸せなひととき

―― 12月25日 クリスマスの日 ――
大きく背伸びをして、気持ち良く目覚めた黒沼は、幸福感に満ちた健康的な朝を迎えていた。
黒沼家のクリスマスは、部屋の綺麗な飾り付けから始まる。
そして、テーブルに並べられた沢山の美味しい料理を皆で囲みながら、プレゼントを交換し、平和な暮らしを皆で楽しく感謝する事になっている。
この日は冬休みの始めでもあり、彼女の家へ矢野と吉田がいこいを求めて集まって来た。
ただ、彼女達が遊びに来たのはクリスマスだからでは無く、女の子なりの目的が有った。
黒沼も含め、彼女達には昨日のパーティーから聞きたい事、話したい事が山ほど出来ていた。
つまり、昨日の今日に集まったのは、それらの事を存分に分かち合うためであった。
彼女達の集まりは、世間では女子会と呼ばれている。
女子会とは、その名の通り女子だけの会合であり、会食や茶話さわ会から友人の軽い集まりまで、女性だけがつどうの全ての集会を指すそうである。
集まる人や場所は多岐にわたっていても、情報交換をして良い刺激をもらったり、ゲームや話をしてストレスの解消をしたりなど、その意義や目的は明確になっている。
この集まりは男子禁制である事から、そこで話される内容は恋愛事情が多くを占めている。
彼氏や好きな人についての話、もと彼氏の話や、彼氏のもと彼女についての話、いては異性の話であれば何でもするため、男子にとっては耳をふさぎたくなる内容も存在している。
例えば、女子達で勝手に男子を採点して盛り上がる事が有るそうである。
女子会は参加者達の現状を知る良い機会となっているため、彼氏が出来て参加しなかった人がいようものなら、先を越された女子達が罰を与えるかのごとく平気でののしる事も有る。
場合によっては、参加者達の間で競争意識が働き、持ち物や地位・収入、彼氏などで自慢話を繰り広げ、優越感を求める人もいる。
これらの人達が好むのは、残念ながら大方おおかたが他人の不幸話になる。
女子会が、仲良しだけの集まりであれば、きっとこんな事にはならない。
男性側からすれば、気になる女性の人柄ひとがらを知るために女子会の情報を活用したい所であるが、SNSで見られる内容は、印象の良い表向きの情報だけで構成されており、伏せておきたい内容を載せなかったり、建前を述べていたりするため、気になる女性のSNSを知り得たとしても、その実態まで知るのは容易で無い。
この事は、マッチングアプリに登録している女性のプロフィールを拝見しても、彼女の人柄を正確に捉えるのが難しい事と少し似ている。
相性の良い人と交際したいのであれば、やはり気になる女性には出来るだけ全員に会って話をしなければ分からない事が有るため、億劫おっくうがらずに頑張るしかない。
これまで女子会の悪い面ばかりを取り上げてしまったが、もちろん良い面も沢山あり、分かり合える友人と本音や秘密を打ち明けられる機会ともなっている。
世の中の女子会が印象の悪い集まりだけでは無く、黒沼達の女子会のように互いを思いやれる楽しい集まりも有る事を嬉しく思う。
黒沼の部屋に通された矢野と吉田には、恋話のともにお茶菓子が振舞われた。
彼女は、風早にもらったプレゼントの手袋を、嬉しそうに手にはめた。
「 じゃあん 」
「 あっ いーじゃん かわいー 爽子っぽい‼ いーいー‼ 」
「 ひょー 似合うね!  さすが風早 爽子バカ!
  お礼にチューとか してやれば いーよ‼ あはははは 」
「 そりゃ よろこぶわ ―― !!! 」
のぼせて自慢する手袋の似合う事に、二人はうらやましく思う程の相思相愛を感じ取っていた。

黒沼に似合うデザインの手袋をプレゼントした。

    彼女に似合う物を理解している。

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