20巻 episode 81. 提案
「 きょ 教師 ⁉ 」
「 うん 」
「 じゃー 進学かあ! あの近くの四大? 」
「 に なるのかな? 」
「 小学校? 」
「 うーん まだそこまでは 考えてないけど
荒井先生をみてたから なんとなく高校の先生を思い浮かべてた ・・・・・・
私が教師なんて それはもう一筋縄ではいかないと思うのだけれど ・・・・・・
せっかくみつけたやりたい事だから がんばってみたいの 」
荒井を尊敬し、憧れや羨望を感じている黒沼が、教師を目指す事は自然に思われた。
三者面談で、荒井が嬉しそうに認めたその進路希望に、彼女は目標を明確にした。
一年生の頃は、試験対策ノートと勉強会がクラスの皆に評価され、二年生の頃は黒板を使用しての講習会を開いて大成功するなど、勉強の出来る彼女は教える事も上手かった。
荒井の言っていた『 底にあるもの 』こそ、彼女が教師を目指すに至った影響は大きい。
教師の仕事は教科・科目を指導する事だけでは無く、彼女の言う通りに一筋縄ではいかない事が沢山有るのだろう。
教師になれば、多忙な日々の暮らしの中で、時には不良生徒に手を焼く事も考えられる。
でも彼女であれば、荒井の言うように「 どこへ行っても 何をやっても頑張れる 」持ち前の長所を活かして、悩める生徒たちを救い、皆の力を伸ばしてくれる。
さて、彼女の進路を聞いた風早はどうなったか?
黒沼が見合った進路を見つけ出し、彼は機嫌が良かった。
彼女と一緒に帰ろうと、下駄箱前で待つ嬉しそうな彼は、些細な事にも幸せを感じていた。
彼女はどんな教師になるのだろうか、未来を想像するだけで楽しかった。
校門を出ると、彼は黒沼の手を取って歩いた。
俺の自慢の彼女だ!
「 うそー 見た? 風早から ・・・・・・ 」
と背後から、下校中の女子生徒達の声・・・。
「 か ・・・ 風早くん ・・・ 人が ・・・・・・( 見てるよ )」
「 いーの! ・・・・・・・・・ 黒沼が ―― 嫌だったら我慢する! 」
嫌だなんて、とんでもない ‼
ふるふるふる ・・・・・・
彼女は頭を横に振ると、彼の手を強く握り返した。
彼の父に「 つけあがらせるな‼ 」と注意されていても、彼氏の甘えるお願いには、つい気を許してしまう。
背後から感じる、女子達の刺すような呪わしい視線に、風早は最初から気付いていた。
バレンタインデーが近づいている今日この頃。
モテる彼は、仲良しカップルの健在を周囲に知らしめて、幸せな今を嚙み締めるのだった。
甘え上手である。
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