22巻 episode 90. まちがえた
模擬試験の結果が返ってきた。
成績表を手に、風早は黒沼と話し合った。
本気を出した彼の成績は、目を見張り、感じ入る程に向上していた。
快進撃の始めの如く、合格圏内のライバル達を猛追する彼に、黒沼は不安無く鼓舞出来た。
もうすぐ7月、風早と黒沼が交際を始めてから1年が経とうとしている。
真田は練習試合と予選を順調に勝ち続け、吉田との関係も今、これまでに無く熱い。
矢野と塾に通う三浦は、普通に勉強も恋愛も上手くいっている様に見えた・・・。
しかし、ある日、体育の授業での事 ―――
汗を流す仲間達を、腰を下ろして観戦する風早に、三浦は相談話を持ち掛けた。
「 ・・・ なんか悩んでんの? 」
「 ん ――― ・・・
あやねちゃん推薦志望でさ
ずっとオレも そのつもりでいたんだけど ――
札幌でさ 2人楽しくさ
でも 受験考えてた それも東京の ・・・・・・・・・
そんなの初めて聞いてさ ・・・
オレ何も言えなくてさ ―――
まぁ そしたら
あやねちゃんは やっぱり推薦がいい とは言ってたんだけどね!
・・・・・・・・・ ほんとに そーなのかな …………
つきあう前から東京の大学 頭にあったって言ってたけど
・・・ オレのことすきになってって言って つきあい始めたけど
あやねちゃん オレのことすきかなぁ ………?
心配なんだよね オレ
・・・ 勉強ばっかして はりつめてるあやねちゃんが心配なのはもちろんだけど
受験考えてるって話聞く前からさ
なんかあやねちゃん オレのこと どー思ってんのかなって
気づかなかったんだ 全然
あやねちゃんが進路のこと そんな風に思ってたなんて
・・・ オレ あやねちゃんのこと すごい見てたけど 本当にちゃんと見てたのかなー
・・・ 風早はさ!
彼女が迷ってたらどーする? 遠距離になるかもしれなかったら どーする? 」
「 どーしたいの? 」
「 そりゃオレは離れたくないよ! 」
「 行くなよ!
・・・ って言いたかったら言えばいい
それで決めんのは結局 矢野だよ
でも 言わないって決めたら言うな 」
遠距離恋愛なんて、本当は考えたくもない。
三浦の心情に思いを重ねた彼は、もし黒沼が実力相応の大学へ進学を希望したならば、自分はどうするだろうかと、我が身の様に考えたのだった。
やれば出来る男である。
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