24巻 episode 96. 現在 過去 未来
3年生になれば、何事においても行事には、「 最後の 」という言葉が付いてくる。
学校祭を間近に控えて、着々と準備を進めるクラス一同に昼休みの時間が訪れると、風早と黒沼は校庭のベンチで昼食を共にした。
受験勉強に追われても、年中行事は手を抜かずに楽しむのが、彼らの良い所である。
今年のテーマは〚 現在 過去 未来 〛。
このうち3年生が受け持つのは、〚 未来 〛となっている。
3年生に〚 未来 〛とは、意義深いテーマが与えられているが、交際から1年を迎える二人にとっては、過去、現在、未来のどれもが感慨に浸らせるものだった。
長いようで、とても短かった1年。
恋人や友人、仲間との活動で過ごして来た質の高い日々から喜びを感じ、未来を思った。
この学校祭が終われば、残りの高校生活は受験一色に染まって行く。
彼女は胡桃沢との勉強が非常に捗っており、互いに成績も上がっている事が嬉しかった。
恋敵だった頃の胡桃沢は、可愛い子を演じながらも黒沼を平気で貶める人物であったのに、恋に敗れてからは、周囲からの評判を気に留めず、素の性格を出して生きる様になった。
風早が好意を寄せる黒沼を認めて潔く身を引くと、そっと後援する側に着いていた。
「 私 くるみちゃん すきなんだ すごく
正直でね! 情熱が! あって‼
前を向いてて すごく頑張ってるんだ
一緒にいると 私も頑張ろうて思うの 」
「 ・・・ 共感すんのかな
黒沼も そーだもんね 」
「 そ そうかな ・・・・・・ 」
「 そーいうとこ すきになったからね
がんばって なんとかしようと してるとこ
まじめなとこ うそがないとこ 笑顔が かわいーとこ! 」
えっ‼ 私のどこが好きなのかなんて、初めて聞いた気がする・・・。
もう、とうの前から自然な柔らかい笑顔の出せる彼女は、嬉しそうに頬を赤く染めた。
「 でも
疲れた時は ・・・ 俺が いるからね
休んでいーよ 黒沼専用だから 」
と、自分の肩をポンポンと触り、寄り掛かってくれる様に催促する風早。
彼女を労わるつもりで誘ってはいるものの、本当は自分が彼女に上手く甘えたかった。
誰も現れない昼休み、二人は支え合うカップルの様に、互いに寄り添って休息を味わった。
支え合える。
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