24巻 episode 97. 学校祭
受験勉強に長い時間を費やしている風早が、この最後になる学校祭のために気合いを入れて積極的に準備を進めて来たのは、彼なりの思い入れがあるのだと読む事が出来る。
学校祭は、昨年に二人の恋がめでたく成就した行事である。
このお祭りの雰囲気は、当時の記憶と感情を蘇らせ、二人に微熱を帯びさせた。
しかし、それも今日と明日で最後。
二人は模擬店を一通り見て周ると、思い出の花壇が目に留まる廊下の窓で、落ち着いた。
風早は外の景色を眺めると、以前から考えていた二人の未来を思った。
黒沼に相応しい大学は、やはり俺が受ける地元の大学では無い。
だから俺の存在が、彼女に同じ大学を選択させているのではないかと懸念して来た。
もしそうだとしたら、俺は今どうするべきだろう。
いや、答えは何も変わっちゃいない。
正直に、彼女と離れるのは嫌だ。
でも、彼女には相応しいD教育大学に進んで欲しいと思っている。
だからといって、自ら話を持ち出すのは違うとも思う。
彼は、言葉を選んで話し始めた。
「 これから大学とか行ってさ
俺より黒沼のそばにいて
俺より全然いーやつで
俺の知らないそーいうやつが
黒沼のこと すきになるかもしんない 」
彼女は話に違和感を覚えた。
「 ・・・・・・・・・ しらないひと ・・・・・・?
大学 ・・・・・・ 一緒なのに ・・・? 」
「 ・・・ たとえばだよ!
進学したら今よりもっと人多いし
知らないやつばっかでしょ? 」
彼女の進学先についての考えや、思う所を知りたい気持ちは有っても、彼はそれ以上の話をしなかった。
神妙な顔で彼の話に耳を傾けていた彼女であったが、彼の気持ちには気付けなかった。
「 私 風早くんがいいので
風早くんじゃなきゃ やなんだよ ・・・
・・・ どうも ありがとう
顔が見れたら嬉しいし
声が聴けたら嬉しいし
風早くんのこと 考えてたら幸せだし
でも
一緒にいられる時は もっともっと嬉しいです
これからも よろしくお願いします! 」
「 こちらこそ これからもよろしく‼ 」
急に畏まる彼女に、上手く次の言葉が続かない風早であったが、二人は交際1周年を祝い、愛を確かめ合う事が出来た。
二人の記念日を大切に祝う。
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