24巻 episode 98. ずっと
学校祭の1日目を終えた風早は、夕日に染まる顔が少し恥ずかしそうに見えた。
今日の彼は、黒沼の前で一つ失敗をしていた。
ここのところ毎日が忙しくて睡眠不足に陥っていた彼は、朝食まで抜いていた事で体調不良を引き起こし、夕方まで保健室で横になったのだった。
彼が帰宅すると、腕を組んだ父が厳しい形相で待ち構えていた。
その威圧感から、父の不愉快な様子が窺えた。
「 ・・・ ただいま 」
「( 担任の荒井 )一市に聞いたぞ
一市の手を握ったそうじゃないか
あらかたサワコとでも間違ったんだろう ・・・ ハレンチな‼
・・・ 倒れたらしいな
自分の健康管理も出来ない奴が偉そうな事ばかり言いやがって
世の中 甘く見るな‼ 」
「 〰〰〰〰〰 っ💦
それは ・・・ 今後 気をつける‼ 」
彼は受験生になってから、時間を大切に毎日を過ごしている。
しかし、ベストを尽くせていたのかと考えると、結果からすれば、そうとも言い切れない。
彼は体力に自信を持っていたが、流石に今回は無理をし過ぎてしまった。
彼女に少しでも近づきたいから、もっと頑張れる・・・
彼女が見守ってくれるから、一層頑張れる・・・
きっと彼はそう思って頑張って来たのだろう。
これが力の源になって彼が張り切り過ぎた結果、今回の失敗を招いた。
父とて、息子の彼女に対する惚れ込み様は、彼が保健室で寝ている間にやられた額の落書きを見てもよく分かっている。
息子が夜遅くまで勉強している事を知っている父は、初めて見せてくれた真剣に頑張る息子に水を差さぬ様、父なりのエールを送った。
また、「 自分の健康管理も出来ない奴 」が、スポーツ科学の道を進みたいと言うのであるから、父の主張する通り、確かに違う。
偏差値を満たして合格出来ても、その人物が大学で専攻する分野に適するとは限らない。
従って彼も、スポーツ科学の道を志す者として、まだまだこれからの男であると言える。
やるからには、とことん磨いて一流になって欲しいと思う。
――― 道を極めた者が辿り着く場所は いつも同じだ ―――
ある侍剣士の有名な台詞の様に、私達も一流を目指し、それぞれの道を極めたい。
例え些細な事であったとしても、一人が仕事や遊びなど、普段の生活の中で価値の有る事を成せば、輝いた本人が、その場を、その世界を明るく照らす様になる。
その様な人物が増えれば増えるほど、私達の住む街や地域が、更には日本中が、もしかしたら世界中もが明るく照らされる未来も可能となってくる。
将来性が有る。
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